ディペンダブルシステム学研究室 ~ 修了生インタビュー ~

ディペンダブルシステム学研究室では、ディペンダブルな(頼りがいのある)システムの実現を念頭に、VLSIの設計とテスト、分散アルゴリズム、並列アルゴリズム、データマイニングなど様々な研究に取り組んでいます。本研究室に入学した学生たちはまず、講義や輪講を通じて基礎的なことについて勉強します。また、M1の夏には韓国ハンバット大へ2週間インターンシップに行きます。その後は、各学生の興味分野について研究を推し進めていき、その成果を国内外の学会や論文誌で発表します。学生によっては企業との共同研究など実践的なテーマに取り組むこともあります。そして最後に、自身の研究の集大成として修士論文を執筆し、発表します。そんな2年間を過ごし、2014年3月で修了し本学を巣立っていく学生たちに、NAISTでの生活、研究について感じたことや、経験に基づく後輩たちへのアドバイスなど、色々聞いてみました。

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Q1: 2年間の研究を終えてみてどうですか?

Ni: 僕は企業と共同研究ができたので、非常によい経験ができたと思っています。研究に関して学べたのはもちろんですが、実際に会社に入る前に企業の方と接することができ、研究以外にも役立つことを学べたと思います。ただ、毎月ミーティングがあり、それに向けて何らかの進捗を出せるように頑張らないといけないということで、学内でも毎週打合せをしていたので、そこはしんどかったですね。でも、もし後輩が入ってきたら、(同じようなことを)やるように絶対勧めたいと思います。研究自体やっていて面白いし、プレゼンの練習などよい経験ができるので、進学するにせよ就職するにせよ経験しておくとよいと思います。

It: 2年間あっという間に過ぎましたが、海外に3度も行くことができ、入学当初に予想していたより色濃い、起伏に富んだ2年間でした。特に、入学した4月から、夏に韓国ハンバット大へインターンシップに行く直前までの間は、授業を受けたり、現地で紹介する論文を読み始めたり、輪講の準備だったりと、出身の高専ではあまりやらなかったようなことを密度濃くやっていたので、記憶に無いというと語弊がありますが、細かく思い出すのが難しいくらい色々やっていたような気がします。また、学会発表の準備に苦労しました。文章を書くよりはコーディングをしたりものを作ったりする方が好きなので。ただ発表となるとそれなりの形になって人の目に触れるので、中途半端ではいけないと思うとなかなか時間がかかってしまい、そこは結構苦しかったです。でも、学会で会う方々とコミュニケーションをとって、質問していただいたり評価していただいたりすることで、論文の中で説明不足だなと気付くところだったり、検証が必要なところだったり、自分だけでやっていると思いつかないような点について考える機会は増えるので、そういう面で発表する機会を与えてもらえてすごく良かったと思います。なので、スケジュール的には大変になりますが、これから入学してくる後輩たちにも是非学会での発表を勧めます。研究は自己満足で終わってはいけないと思うので、成果としてよいものが得られるかどうかはともかく、自分が出した成果を人に評価してもらったり、公の場で検証してもらったりする場を持つことは大切だと思います。

Na: 出身の高専ではハードウェアに関する研究をやってきて、NAISTに入学してから分散アルゴリズムに興味を持ち、新しい分野を一から勉強しなおすところから始めたので、やはり、慣れ親しんだことを続けている人と比べると、スピードが落ちてしまいました。先日、分散アルゴリズム関連の学会発表に行ってきましたけど、他の学部生の発表とかが自分のやっている内容と同じレベルぐらいに感じたりして。研究分野を変えることには一長一短あると思いますが、個人的にはスペシャリストよりはジェネラリストでありたいと思っているので、いろいろな分野を勉強できてよかったと思っています。また、研究室では大きく分けて(ハードウェア、アルゴリズムの)2つの異なるテーマに取り組んでいる人達がいるので、自分の研究に関して輪講とか発表練習とかで話すと、他分野の人達が気になる点を聞いてくれて、それが自分では気が付かないことだったりするので、他分野からの視点というのも勉強になると思いました。

Yu: 私はドイツからの留学生ですが、日本の学生が1年目の半年ぐらいで必要な単位を取っていく中、英語の講義も少なく、最初の1年間は講義に追われ、2年目から研究を始めることができました。国際コースがあるとはいえ、カリキュラムがもっと充実するとよいと思います。研究は非常に面白く、楽しんで取り組むことができました。NAISTはドイツと比べて自由に研究ができる印象です。特にディペンダブルシステム学研究室は学生数に対して教員数が充実していて、毎日先生方と研究について話せたのがよかったです。私も大学院に入ってから分野を変えて論理回路のシミュレーションに関する研究に取り組んだので、初めはとても難しかったです。この1年間、色々なことを勉強して、私がこれまで取り組んできたハイパフォーマンス・コンピューティングの技術を論理回路のシミュレーションに取り入れることが出来ました。

Mi: 僕は高専でもハードウェアに関して勉強してきたので、研究の背景などは分かっているつもりでしたが、実際に研究成果が社会で役に立っているのか、よく分かりませんでした。でもNAISTに入って、色んな研究テーマがあることを知り、それが実社会でも応用されていることを知りました。そこから、もう一度きちんと勉強し直したいという気になりました。僕も文章を書くよりは自分の手を動かしてプログラムを作って、結果を取って、そこから何かを考える方が好きなので、実装している時が特に楽しかったです。一度作ったプログラムがうまく動作しなかった時はショックでしたけど、そこからもう一度作りなおして成果が出た時は、本当に嬉しかったです。

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Q2: 韓国ハンバット大での2週間のインターンシップはどうでしたか?

Mi: こういう機会を与えて頂いてよかったと思います。海外に行ってこのような経験をできるのは国際会議に行く人だけだと思っていたので。僕は韓国に行ってまず、文化の違いを感じることができました。相手方の先生、学生との交流を通じて、研究内容や、英語など、色々な知識を取り入れることができ、すごく楽しかったです。

It: 韓国では日本語でコミュニケーションをとることがしばらくの間できなかったので、あの時が一番、実践的に英語を使う能力が伸びたんじゃないかと思います。海外へのインターンシップは英語能力を養うのに非常に有効だと思います。

Yu: すごくよい経験になりました。これから入学してくる学生の皆さんにも強く勧めます。

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Q3: 自身の研究分野の面白いところ、魅力は?

Na: 分散アルゴリズムの中でも理論的なことをやっていると、計算機がなくても、いつでもどこでも研究できるところが魅力です。実験系の研究だとどうしても研究室にずっといて、実験を繰り返したりする必要がありますが、理論的な研究だと日常のどんな場面でも考えることができます。お風呂に入りながらでも。また、実験系だとどうしても限定された空間で使うとうまくいくという話になっていくことが多いですが、理論だとそれができればどんな環境にでも適応できて、たとえば自分の研究でアルゴリズムが少しでも速くなったら分散アルゴリズムをつかっているどんな分野でも高速化ができます。そういうところが理論に取り組むことの面白さだと思います。この分野はやはり、数学自体が好きな人、証明を考えるのが好きな人はどっぷりハマるんじゃないかと思います。情報系でやってきてプログラミングなどを主にしてきた人にとっても勿論面白いとは思いますが、理論の話になると、やっぱり数学が好きっていう人がやるとハマっていくと思います。

As: 僕はプログラミングをバリバリやる人ですが、研究では分散アルゴリズムを勉強しています。例えば、プログラミングでRuby-on-Railsというものがあり、そこではデータベースを操作するような仕組みがあるんですが、実際そこで、楽観的ロックっていう手法が使われていて、実はそれは理論の世界で考えだされたものを応用して作られていたりするっていう発見があって。そこで僕は、やっぱり理論的なものも応用されていると知って、そこで、分散アルゴリズムの理論を頑張ってみようかなと決意しました。だから、実装とかが好きな人こそ、理論をやれば新しい発見があるんじゃないかと思います。

Ni: 僕はデータマイニング技術を応用してVLSIテストを最適化する研究に取り組んできました。この分野は比較的新しく、現在非常にホットなトピックなので、新しいことにどんどんチャレンジしていくことが好きな人に向いていると思います。また、VLSIテストに限らず、“ビッグデータ”、“データマイニング”は近年色々な分野で注目を集めているということもあり、就職活動においては多くの企業で面白い研究をしているという印象を持ってもらえました。

Ta: ディペンダブル・信頼性というキーワードは、分野を問わず普遍的に重要なものであることは就職活動をしていても感じます。面接でもよく聞いてもらえるので。やっぱり、何をするにしても、半導体に限らず、信頼性を意識するというのは大事だと思います。対象が何であるにせよ、ものを作る仕事の中には必ず信頼性がキーになってきて、今僕が取り組んでいるのは半導体の信頼性ですが、信頼性そのものに関する考え方は、たとえ将来違う分野の仕事についたときでも活きると思います。

Mi: 初めは(ディペンダブルシステムに関する)研究テーマは少ないように感じたのですが、実際に触れてみてそうではないことに気づきました。研究室でもみんながそれぞれ違うテーマに取り組んでいて、それぞれのテーマ一つとっても非常に奥が深いことを知り、それを魅力と感じました。

Yu: VLSIテストは社会にとって非常に重要な技術で、その研究はとても面白いと思います。テストと一口に言ってもそこには様々なトピックがあり、物理レベルからシステムレベルまで多岐にわたっているため、もし今VLSIテストについてよく知らないという学生さんでも必ず何か興味が持てるトピックを見つけられると思います。

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Q4: NAISTへの進学を考えている後輩たちへのメッセージをお願いします。

Ni: NAISTは国際交流のチャンスがたくさんあります。ディペンダブルシステム学研究室でも、色々なところから教授を招いて話を聞けたり、海外へインターンシップに行く機会があったりします。また、NAISTは留学生が沢山いるので、これも一つの魅力だと思っています。もちろんそのチャンスを活かすかどうかは本人次第ですが、これから入ってくる学生にも是非、活かしてもらいたいと思います。

Mi: 輪講、論文紹介、研究進捗報告など、色々な場で、色々な人に意見を言ってもらえて、勉強ができるというのはこの研究室の魅力だと思います。もちろん人それぞれだとは思いますが、もっと勉強したいと思う人には最適です。大変でもありますが。

Na: 僕だけになるかもしれないですが、大学院で研究を続けてきて、僕は研究が一旦落ち着いたらこれをしようとか、この成果まで出したらちょっと他のことをしようとか考えていました。でも実際にはそれは難しかったです。やっぱり、研究をしながらも違うことをやるという意識で生活を送るほうが過ごしやすいと思います。研究を踏ん切りつけてというよりは、研究を常に考えながら、他のことをやれるような精神の作り方をしていったほうがよいと思います。

It: 入るからには、やると決めたことはやるという姿勢でいけば、文献や計算機など環境は十分整っているので、あとは自分次第だと思います。

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2年間の大学院生生活を通じて、研究はもちろんのことそれ以外の面でも様々な経験を積んできたようです。この経験はこれから社会に出てから必ず役に立つと思います。皆の今後の活躍が楽しみです。