NAISTカーシェアリング | ソフトウェア工学研究室

ソフトウェア工学研究室客員准教授の畑です。ソフトウェア工学研究室ではソフトウェアを取り巻く課題に理論と実践の両面から取り組んでいます。今回は奈良先端大でテスト運用している乗り捨て可能カーシェアリングについて紹介します。公共資源である電気自動車を不特定多数のユーザでうまく運用できるメカニズムを研究することで、多種多様な資源が入り乱れるオープンな環境でのソフトウェア開発の課題に取り組んでいきたいと考えています。つまり、実証実験・実証分析の場としてカーシェアリングの研究開発をしています。プロジェクトWebページはこちらです:https://naist-carshare.github.io/

NAISTカーシェアリングには、三菱 i-MiEV 2台とBMW i3 1台(教職員のみ使用可能)の車両が用意されています。奈良先端大キャンパス内と近鉄学研登美ヶ丘駅近くの駐車場のいずれかで車の貸し出しと返却を行うことができます。大学内と駅前のどちらでも返却可能になっています。車の施錠・解錠にはスマートフォンアプリを使います。車両の使用開始から終了まで、ユーザはスマートフォンだけで操作が完結します。

NAISTカーシェアリングのユニークな点は、車両を使用する時間帯を予め申告する予約システムではなく、使用開始したい場所と時間帯を入札するオークションシステムであることです。希望者が集中した場合も好ましい割り当てが期待できます。使用中に他のユーザの入札に基づく需要を確認でき、需要の高い場所に返却すると報酬が得られる機能もあります。

技術的には、暗号通貨の1つである Ethereum を活用し、ブロックチェーン上で実行可能なプログラム「スマートコントラクト」を用いてシステムを実装しています。スマートコントラクトによりカーシェアリングにおける使用権の付与、管理、使用時における認証認可、及び支払いを実現することでこれらの機能が自動的に処理され、システムの自律的な運用が可能となっています。このプロジェクト用に発行したEthereumトークンを、各ユーザに1週間に7トークン分配布しています。ユーザはこのトークンで入札します。

一月ごとの使用状況をまとめて公開しています:https://naist-carshare.github.io/log/。オークションに勝利して車両を使用できた割合はおよそ80%になっており、そこそこうまく運用できているかなと思います。次の図は、2021年1月の、使用開始したい時間帯への入札回数を時間帯ごとにまとめたグラフです。この月の総入札回数は195回でした。昼前と夕方の入札が多いようです。24時間いつでもシステムは稼働しているので深夜や早朝にも入札があったようです。

こちらは一月の全ての移動を可視化した図です。滞在した頻度が高いほど赤く、頻度が低いほど黄色く示しています。大学と駅付近の駐車場を中心とした近辺で活発な移動が見られる一方、大学からやや離れた地域への移動も見られます。

今後は全学への本格運用へ移行するとともに、けいはんな地区への規模の拡張、車両への入札以外にトークンが使えるサービスの拡張、コミュニティへの貢献を推奨する報奨システムの拡張、他大学・他地域との連携などへの発展に取り組んでいきたいと考えています。