スマートフォンの次には何を持ち歩く?

コンピューティングアーキテクチャ研究室です。研究室旅行の時、以下のトークがありました。

近年スマートフォンが劇的に普及しました。そんなスマホも黎明期は過ぎ市場は飽和状態に近づきつつあります。そこでスマートフォンの次、ポストスマートフォンはどんなものになるのか、自分はどんなものが欲しいかを、とある旅館で情報系のギークたちが語りました。

伊勢エビ宴の前

KNM:  手軽に身に付けて持ち歩くことができるウェアラブルデバイスでしょうか。腕時計や指輪など普段多くの人が身に付けているデバイスが、コンピュータやセンサの役割を担うでしょう。ドラえもんの「翻訳こんにゃく」のように、異なる言語間のリアルタイム変換のような、今ではSFの世界でしかありえないようなことが現実になると思います。近い将来実現しそうな例を挙げると、体温や脈拍等体調変化のデータを蓄積し、異常があれば知らせるデバイスや、位置センサを追加して家電と連動させることで、「自宅に近づいたら勝手にスイッチが入るエアコン」や、「家に着いたら丁度ご飯が炊ける炊飯器」の様な、身近な機器にさらに便利な機能を持たせることができるようになるはずです。

KSD:  自分が思ったこと・感じたことを、言葉などを経由することなく「そのまま」他の人に伝えることが出来る技術が実現すれば面白いと思います。季節独特の空気感やそれによって連想されるイメージなど、言葉にしづらく、かつ人によって感じ方が異なる感覚を忠実に伝えることができればどれだけ素晴らしいであろうか。また、美術館などで芸術家の作品を鑑賞し、自身のセンスで評価できることは楽しく興味深いことです。さらにこの技術を用いれば、それに加えて芸術家本人が持つその作品の元となったイメージや感性までもが鑑賞可能となります。実現されるのはまだまだ先のことだと思いますが、様々な人の感性を「鑑賞」できる事を楽しみにしています。

HYS:  思ったことや感じたことを直接入力できるのはいいですね。スマートフォンの登場でネットから情報を得ることは簡単になったが、それでも、「調べたいと思う→端末を起動→文字を入力→検索」という一連のプロセスが必要であることに変わりはありません。「知りたい情報がすぐに手に入る」ことを突き詰めると、キーを入力せずとも、知りたいと思ったことを自動的に検索し、視覚的に表示できる端末が望ましいため、Google Glassを進化させたようなデバイスが普及するのではないだろうか。

FGW:  次に周りに持ってもらいたいデバイスかなり先の話になってしまいますが、脳波で操作するゲームを未来の人たちに持ってもらいたいです。脳波を用いた文字入力装置や夢の内容を読み取る装置はすでに開発されているため、それが普及可能な時代になった時に、ゲームに使えるような低レイテンシのハードウェアになって欲しいです。

近鉄で伊勢志摩へ

TNM:  生体に直接接続して制御できるコンピュータは面白いですね。例えば、ちょっと思っただけでGoogle検索でき、その結果が視界に入ってくるような装置や、直接メモリ素子をつないで暗記を助けたり、ちょっとした暗算を高速かつ正確にしたりといったことも考えられます。試験なんてカンニングペーパーならぬカンニングメモリを作ってつないでしまえばいいことになりますので、暗記科目が無意味になります。では何が差を生むかというと、できるだけ効率よく読みだすために脳内のキャッシュにヒットさせるといった検索能力になってくるかもしれません。

SMZ:  1つ目は、一人一台スパコンです。さらにそれを持ち歩くようになれば,便利な世の中になると思います。スマートフォンサイズの機器にスパコン並みの機能が搭載されれば,写真や動画の代わりに3Dスキャンした映像と音声をリアルタイムで発信・再生ができて面白いかも。
2つ目は、脳の人工的に再現したものです。人格、知識、経験などの人物そのものを形作る要素をバックアップ、転送、共有ができる機械を個人で所有できるようになって欲しいです。他人の記憶を追体験して感動を共有したり、アルバム代わりに思い出をバックアップしたり、子孫に知識を残して人類の発展に貢献したり、さらには擬似的な不老不死など、とても夢のある話ではないだろうか。

TDK:  最近のスマホや携帯ゲーム機は性能はいいですが、電池の持ちがわるいですよね。そこで、専用のハードウェアで計算させればすぐ終わって省電力になるのではないでしょうか。しかし、それではwordしかできないスマホ、モンハンしかできない3DSとかになってしまうので、使えないですよね。そこで、ソフトウェアのアップデートと一緒に、ハードウェアもアップデートしてくれるようなスマホとかゲーム機が欲しいです。みんなに持ってもらいたいというより自分が欲しいものですが。あとは、ワイヤレス給電とかが、発達してくれたら電池の持ちなんて気にする必要がないでしょうけど。
まとめ:
ウェアラブルデバイスや脳からの直接入力などの意見が多くでました。90年、00年代のアニメや映画が、SFから現実に近づいてきたように思えます。

1年間で1000万円使える!さて、何をしようか?

1000万円という金額は、普段の学生生活では意識することの無い大きなものですが、大学における研究や企業における開発ではしばしば見かける金額です。「予算と期間が与えられた際に、何ができるか」について自由に議論してもらいました。

KING of K

TDK:  ソフトウェアの更新と共に、それを実行するためのハードウェアも更新するシステムを実用化してみたいですが、全て開発するとなるとお金が足りないですよね。話は変わりますが最近、3Dプリンターが安いものであれば10万程度で買えようになってきました。しかしCADを使えない人たちは3Dのデータを個人で用意するのはなかなか難しいという問題があります。そこで、3Dデータをある程度の精度で簡単に撮れるカメラ、とかがあると自分で何でも制作できて楽しそうだなと思います。1000万円を使えるのであれば、このようなシステムの開発に取り組みたいと思います。

SMZ:  この世に存在するあらゆる情報を掌握し、未来に起こりうるすべての出来事を予測する全知神のようなコンピュータを開発してみたいと考えています。しかし、このような大規模なシステムは1000万円では到底開発できません。そこで、地盤づくりとして膨大な情報収集のためのセンサネットワークに関する研究に1000万円を費やしたいと思います。特に、人件費に重きを置き、自分の研究を補佐してくれる人材の確保に充てたいと思います。

HYS:  1000万円は多いようで少ないため、研究者の雇用費や試作の部品代には足りません。スマホの次の項目で言った「知りたいことを自動認識する端末」の実現を目指す場合、必要な研究設備(センサ・被験者など)を整えることに消えてしまうと思 います。

チーズ

FJW:  脳波で操作するゲームを実現するために、そういうコミュニティを作るためやスポンサーをどうやって集めるかを考えるために使ってみたいと思い ます。
TNM:  アーキテクチャと関係ないところでいうと、趣味のカードゲームに関する研究に興味があります。昨今ではコンピュータ将棋が盛り上がっていますが、カードゲームは非完全情報ゲームなのでまた違った難しさがあります。
私は現在、将棋等と同じく完全情報ゲームである”Blokus”というボードゲームのソルバをFPGA上に実現するコンテストに取り組んでいます。これがきっかけとなり、ボードゲームやカードゲームにも興味を持ちました。金もうけには直結しませんが、コンピュータの進歩を示す分かりやすいテーマの一つだと思います。

まとめ:
コンピュータ・アーキテクチャ研究室ということで、ソフトウェアだけでなく ハードウェアまで関連したシステムを作りたいというテーマが多かったように感じます。
しかし、新しいハードウェアの開発では非常にお金がかかるため、全てを最初から開発するには不足してしまいます。
例えばLSIでは、チップを自前で開発すると、数千万円~数億円という費用がかかってしまいますが、既成品を購入するのであれば、数千円~数万円で済みます。既成品を利用する部分と自分たちで開発する部分を的確に分類することで、費用を大幅に削減できる、ということに気づきました。

NAIST卒業生アンケート

視覚情報メディア研究室助教の河合です。
今回は、視覚情報メディア研究室の卒業生(博士後期課程修了2名、博士前期課程修了2名)に対してアンケートを行いました。
NAISTに入った理由は?NAISTとはどういうところだったか?社会に出た今、NAISTでの経験はどう活かされているのか?を答えていただきましたので、特に今後NAISTへの受験・入学を考えている方への参考になれば幸いです。

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2009年博士後期課程修了
牧田孝嗣さん

(1)現在、何をしていますか?
産総研の博士研究員(ポスドク研究員)

(2)奈良先端科学技術大学院大学に入学した理由を教えてください
理論の研究に止まらず、デモシステムの実装等、素人へのアピール性も重要視する雰囲気に興味を惹かれたため。

(3) 博士後期課程に進学した理由を教えてください
学生生活後にも、興味分野での研究を継続していくため。

(4)在学中に取り組んだ研究について教えてください
ウェアラブルコンピュータを用いた拡張現実(Augmented Reality:AR)に関する研究。ゴーグル型ディスプレイ等の装着型ディスプレイを用いて、実環境にCGを重ねて表示する技術です。

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ゴーグル型ディスプレイ ユーザが見ている映像

(5)在学中によかったこと,つらかったことなどあれば教えてください.
よかったこと:
研究室の先生の指導が丁寧であり、かつ自由にやらせて頂けたこと。
つらかったこと:
博士課程時、修士課程時に比べて同期の学生が極端に少ないため、同期生でのフランクな議論を行う機会が減ったこと。

(6)NAISTでの経験は、今の仕事などに影響が何かありますか?
現在も拡張現実分野の研究に従事しており、NAISTで得た研究の進め方をそのまま実践しております。

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2011年博士後期課程修了
堀磨伊也さん

(1)現在,何をしていますか?
現在、鳥取大学大学院工学研究科にてプロジェクト研究員として働いています。JST 戦略的創造推進事業 (CREST)の採択課題「人の存在を伝達する携帯型遠隔操作アンドロイドの研究開発」において主に顔認識に関する研究を行っています。

(2)奈良先端科学技術大学院大学に入学した理由を教えてください
もともと全方位画像を用いた画像処理に興味があり、最先端の研究ができると思い、入学を決意しました。

(3)博士後期課程に進学した理由を教えてください
研究に対してやりがいを感じて過ごしていた日々の中で、研究職に就きたいと思い進学を決意しました。当時、研究室に博士後期課程の先輩がたくさんいらっしゃったことも影響していると思います。

(4)在学中に取り組んだ研究について教えてください
「立体映像の生成と慣性力の再現によるテレプレゼンスにおける臨場感の向上に関する研究」を行っていました。画像処理技術とバーチャルリアリティ技術を用いて、遠隔地の人にあたかもその場にいるかのような臨場感を与えるシステムの構築を行っていました。

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慣性力を再現する振動椅子 ユーザが見ている映像
(ジェットコースター)

(5)在学中によかったこと、つらかったことなどあれば教えてください.
よかったことは、国内会議、国際会議だけでなく、大規模なプロジェクトなど研究を通してたくさんの発表の機会を与えていただいたこと。また、CICPという学内プロジェクトに採択され、自ら発案、計画、遂行する経験ができたこと。
つらかったことは徒歩圏内で行くことができる飲食店やレジャー施設がなかったこと。これは慣れれば大したことはないですし、車や電車でみんなで行く楽しみもありました。

(6)NAISTでの経験は、今の仕事などに影響が何かありますか?
自ら進んで考え、行動する力を培えたことは、現在でも大きな自信につながっています。

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2012年博士前期課程(修士課程)修了
山崎将由さん

(1)現在、何をしていますか?
キヤノンで三次元撮像に関する研究をしています。

(2)奈良先端科学技術大学院大学に入学した理由を教えてください
私は、NAISTに入学する前,高専の専攻科に通っていました。そのため、大学院に進学しようと考えると必然的に他大学の大学院に行かなければいけませんでした。そこで、大学院に進学して行いたかった研究を行っている研究室がある大学院をいくつか見て回りました。そんな中、NAISTを選んだのは以下の二つの理由からです。
1.高専からの進学者が多く、新しい環境にもすぐ馴染めそうだった
2.興味のある研究(当時は医療系)を行っている研究室があった
高専からの進学の場合、どこの大学院に進学しても周りは新しい環境になります。なので、大学院大学という誰もが一から研究を始めるという環境は、足を踏み入れやすかったのかなと。これが入学を決めた一番の理由です。

(4)在学中に取り組んだ研究について教えてください
在学中は、隠消現実感(Diminished Reality)に関する研究をしていました。具体的には、現実環境中にCGを重畳する拡張現実感(AR)を行う際に用いられているマーカを、画像中の他の領域の情報を使い画像修復(Inpainting)することで違和感なく除去するという研究を行っていました。

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マーカのある入力画像 マーカが除去されCGが追加された
出力画像

(5)在学中によかったこと、つらかったことなどあれば教えてください
在学中によかったことは、サークル(テニス・茶道)を通して普段話すことのない他研究科の人たちと交流を深めることが出来たことです。2年生になるとほとんどの学生は修了に必要な単位を取り終えるため、同じ研究科でも研究室が違うとなかなか関わる機会が有りません。研究で行き詰っている時など他研究室・他研究科の人たちと話をすることで気持ちをリフレッシュすることができました。先生・先輩方に恵まれたこともよかったです。

(6)NAISTでの経験は、今の仕事などに影響が何かありますか?
今の仕事も大きな分野でみると、大学院時代と同じなので、仕事をする上でNAISTでの経験は非常に役立っています。また、私がいる会社では大学院時代の研究を基に配属先が決まります。

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2012年博士前期課程(修士課程)修了
関井大気さん

(1)現在、何をしていますか?
パナソニックシステムネットワークス開発研究所で、画像認識技術の研究開発を行っています。

(2)奈良先端科学技術大学院大学に入学した理由を教えてください
研究環境が整っていることの他に、秋入学や入試科目など入試方法を柔軟に設定していることが要因でした。

(4)在学中に取り組んだ研究について教えてください
画像認識に関する研究で、撮影環境に関する事前知識として航空写真を用いて、地上視点画像と航空写真を照合し地上カメラの位置・姿勢を6自由度で求める研究を行いました。拡張現実感に応用できます。

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入力画像 入力モデル 合成結果

(5)在学中によかったこと、つらかったことなどあれば教えてください
授業科目が幅広く設定されていたので、多くの科目を学べたことが良かったです。今でもたまに授業で配布された資料を見返すことがあります。

(6)NAISTでの経験は、今の仕事などに影響が何かありますか?
私は現在学生時代の研究分野と同じ研究分野で研究開発の仕事を行っているため、大学院の研究で培った知識をそのまま活用しています。

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ご協力いただいた卒業生の皆さんありがとうございました。なお、画像を追加したり誤字を直した以外はほとんど頂いた文章そのままで編集していませんので、本音?だと思います。
視覚情報メディア研究室では、アンケートに協力いただいた卒業生以外にも、多数の卒業生が社会で活躍中です。受験・入学を検討している皆さん、ぜひNAISTで一緒に研究してみませんか!?