環境知能とは?

我々の研究室の名前は,環境知能学研究室です.

本学情報学研究科の他の研究室は,ロボティクスとか,視覚情報とか,インターネットとか,数理とか,それが難しいかどのように世の中の役に立つかどうかはともかく,それが何を指しているのかは大体わかるのではないでしょうか.一方,「環境知能」といわれても初耳で,それが何を指しているのかさっぱりわからないという方も多々いらっしゃるかと思います.

そこで,今回は,本研究室在籍のM2全員に

「環境知能ってなんだと思ってた?」

「なんで環境知能学研究室に入ったの?」

「今はどんな環境知能の研究してるの?」

を聞いてみました.

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石黒景亮

学部の研究室がロボットを扱う研究室だったのもあり、大学院では人とロボットのインタラクションに関して研究をしたいと思っていました。なので、初めは「環境知能」という名前からセンシングのみを軸とした研究室かと思っていて、研究室紹介を聞くまでは希望研究室の候補にしていませんでした。

しかし、研究室紹介でロボットを扱っていることを知り、とりあえず話を聞いてみようと思いました。ロボットを扱う研究室を色々と話を聞いて廻っているうちに研究室ごとの性格が見えてきて、最終的に環境知能学研究室に決めました。惹かれるポイントはいくつかあったのですが、決め手となったのは研究テーマの自由さです。具体的に取り組みたいテーマが決まっていなかったので、興味ある分野を広く扱っているところがよかったですし、過去の先輩方の研究テーマに強く興味を惹かれたというのもあります。

僕は、この研究室で環境知能の3つの軸「センシング」、「情報構造化」、「インタラクション」を含んだ環境知能らしい研究テーマに取り組んでいます。ロボット単体で考えるのではなくて、環境情報を利用して問題解決に取り組むスタンスがとても面白くて、やりがいのある研究だと思っています。

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岡田亜沙美

環境知能学研究室の名前から連想したのは、環境とつくので、生物や化学を情報工学的に解析するような研究室かと思いました。研究室案内を聞い て、すぐに勘違いは解けましたが。
環境知能学研究室を選んだ理由は、大学院に入る前に画像処理で文字認識の研究をしていたので、大学院でもその知識を活かせるような研究室に入 りたいと思っていたからです。研究室選びのときに、萩田先生とお話する機会があり、“人認識はスケルトンで表すことができて、これは文字認識 の細線化処理と似ている”、ということをきいて、この研究室に興味を持ちました。

今の研究内容は、人の軌跡を用いたグループ検出をしています。例えば、ショッピングモールにセンサを設置しグループ検出をすることで、家族連 れか、老人のみのグループか、障がい者の方のみのグループか等の情報がわかれば、人々により適切な商品の宣伝ができたり、安全な道へのナビ ゲーションが可能になります。環境知能とは、人が生活する環境をセンシングし、計測、認識、構造化することで環境に知能を持たせることです。 グループ検出は、人々の安心、安全、快適な生活を実現する環境知能に繋がります。

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田中勇記

入学当初,私は入学式で仲良くなった友人に誘われて,環境知能学研究室の説明会に参加しました.実は会場に行くまで研究室名や研究内容を全く聞いていなかったのです.ただ,座談会で萩田先生が話していた「ティンカーベルのような小型ロボットが携帯電話に変わってコミュニケーションする未来」が現実になれば面白いな,と強く興味を持ったのです.
私は以前から視覚障害者の「目の代わりとなる技術」の研究をしたいと考えていました.「その場所に何があるのか」「どう動けば安全なのか」普通の人なら見てわかることも目の見えない人には知り得ない情報です.これを教示できれば,安全に出歩くことが出来るようになるだろう,と考えました.
では「その場所」の情報を得るには何が必要か,個別の端末機器では限界がある,その場所にセンサを配置したら良いのでは!まさに環境知能の出番ではないか!このような考えに至ったのが研究室を決めた最大の要因です.

今は「ロボットナビゲーションのための周辺人物の移動予測モデル」に関する研究を行なっています.廊下に設置したセンサから人の動きを認識・予測することで安全で効率的なロボットナビゲーションを実現しようとしています.将来的には盲導犬のように,視覚障害者のナビゲーションに応用したいと考えています.

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橋塚和典

私が「環境知能学研究室」という言葉を初めて聞いたとき、言葉の並びから環境の知能化を目指す研究室だと連想しました。結果的に近い意味合いでしたが、実際には環境中の様々なセンサを利用した人の情報の計測、センサから得られた情報の構造化,ロボットやVR、MRなどを用いたサービスの提供や支援までの幅広い分野を扱う研究室でした。

この研究室を選んだ理由は、ICT時代の中で人の情報を様々なセンサから得ることで人を中心とした高価値なサービスをユーザに提供する事に重要な意味があることや,また幅広い分野での研究になるので、他の研究室以上に様々な知見が得られると考えたからです。

現在,私は拡張現実感(AR)によるルービックキューブの解法教示システムの研究を行っています。この研究はARが人の記憶に与える影響を調査することでサービスの提供や支援を行う際、ARが有用であることを示すことを目的としており,将来的に環境知能の枠組みにあてはめることで教育や介護などの幅広い分野での活躍が可能になると考えています。

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松山洋一

私は「環境知能学」という言葉を入学当初の全体説明会で聞いたため、よく勘違いされる「エコ」という印象は受けませんでした。ただ、や ろうとしていることが多いため、すぐにはどういう研究室なのかという理解が出来ませんでした。

興味を持ったのは、画像系の研究をしたいと思っていて、環境知能学研究室でそういうことをやっていると聞いたのが発端です。元々機械学習 をやっていて、それの応用分野として画像+機械学習の研究をしてみたいと考えていました。研究室見学で他の画像系の研究室を先に回ってい たのですが、私の思っている様な研究はされていませんでした。環境知能学研究室を訪れたのは最後でした。その時の説明会で、画像から人の 状態を学習し認識を行うことを研究していると聞き、「ここだ」と思い所属することとしました。

現在の研究は画像における人の姿勢推定の研究を行っています。環境知能が、人にサービスを提供するには人が現在何をしているか、などといった状態を知る必要があります。その1つとして、人の姿勢という情報を取得する方法の改良が私の研究です。

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森本佳志

おそらく多数の方が「環境」という言葉を聞いて、エコなどの言葉を思い浮かべるかと思います。しかし私はむしろ「知能」という言葉から、何か賢いことをやっている研究室なのだろう、と思っていたと記憶しています。

環境知能学研究室はおおざっぱにいうと、センシング,モデリング、インタラクションという3つの研究の柱を持っています。例として、ロボット と人の対話を考えてみます。まず、カメラなどを使って周囲の状況・環境を観測します(センシング)。次に、それらの観測情報にどのような意味 があるのかを考え(モデリング)、人との対話(インタラクション)に役立てます。こうすることでロボットだけでなく、その周りの環境ごと賢く なって、より素敵なコミュニケーションをしたい、というのが環境知能学のモチベーション(のはず)です。私の研究はその3本の柱の中のセンシ ングに分類される「人物の3次元形状復元」というものです。カメラで撮影した画像は2次元の画像を3次元にすることができます。2次元→3次 元とすることで情報量が増えるので、人物の行動認識や、新たな映像技術に役立てることができると期待されています。

その他にも、環境知能学研究室では、デプスセンサやレーザセンサを用いたセンシング、ロボットインタラクションなど幅広い分野の研究をおこなっ ています。どうぞよろしくお願いします。

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データを読み解くリテラシー

世間では統計学がブームらしい.
kaji-fig1Google のHal Varian氏は,2009年の時点で「今後 10 年間で最もセクシーな仕事は統計学者だ」と断言している.最近は日本でも統計学に関する本が売れているし,ビッグデータというキーワードにも手垢が付き始めている.私自身も研究者として,あるいは普通の市民として,様々な調査結果や統計データに接する機会が多くなっているような気がするが,その中には,首を傾げたくなるものも少なからず存在する.このボンヤリとした違和感は,統計学以前の,統計的な数字という「情報が作り出される仕組み」の取扱いに関する不適切さから来るのではないか,と最近は思いつつある.小文では,情報理論における「エルゴード性」というキーワードを軸に,この雑駁とした感じについて書いてみたい.

影の薄い「エルゴード性」

kaji-fig2エルゴード性は情報理論で学ぶ基礎的な概念の一つであるが,抽象的でイメージすることが難しいこともあり,多くの学生が「理解せずにやり過ごしてしまう」用語の代表例であろう.かくいう私自身も,授業の準備のため教科書を読みなおして「再発見」するまでは,意識の片隅にしか残っていなかったことを正直に告白しておく.エルゴード性とは,「時間平均とアンサンブル平均が等しくなる性質」と説明されることが多いが,この説明ではいまひとつピンと来ない.これは,既に理解している人が「頭で考えてひねり出したキレイな説明」である.もっと泥臭くて良いから,わかりやすい理解の方法はないものだろうか.

非エルゴード的=個性的?

少し乱暴な言い方になるが,エルゴード性とは「個々の情報源に個性がないこと」と理解するのが早いように思われる.まずは具体例で考えよう.

  1. 工場から出荷されるサイコロを無作為に1個選び出し,そのサイコロを100回振ったところ, 1の出た回数が17回だった.この結果から,サイコロが 1を出す確率を17/100≒1/6と推測した.

たった100回の試行結果から議論を一般化するのは少し強引な気もするが,議論の大筋としては妥当であろう.サイコロには色や形の違うものもあるが,統計的には,どれも同じような振舞いをする.すなわち,個々のサイコロには「個性がない」ということができる.どれでも良いから1個のサイコロを選び出してきて,そのサイコロの統計的な性質を分析してやれば,他のサイコロの統計的性質も同じようにわかるはずである.このように,1個の代表の振舞いから全体の統計量を推測できるのが,エルゴード性と呼ばれる性質である.では,上の例と同じ論理構造を持つ次の例を考えてみよう.繰り返しになるが,次の例と上の例とは同じ理屈になっており,出てくる単語や数字が少し違っているだけである点に注意して欲しい.

  1. 日本の成人男性を無作為に1人選び出し,その人の喫煙行動を100日間にわたって観察したところ,タバコを吸った日が90日あった.この結果から,日本人の成人男性の喫煙率を90/100=9/10と推測した.

kaji-fig3明らかにヘンである.サイコロのときに成り立った議論が,どうして喫煙行動では成り立たないのであろうか.理由は簡単である.喫煙行動は人によって異なるのが当然なので,1人の行動をいくら詳細に分析しても,その分析結果を全体に対して一般化することはできない.すなわち,集合や集団を構成する要素に「個性」があるときは,1個の代表の振舞いから全体の統計量を推測することはできないのである.このようなタイプの情報源(現象,行為)は,非エルゴード的であると言われる.

エルゴード性と統計データの読み方

この例からもわかるとおり,非エルゴード的な情報源からの出力について間違った取り扱いをしてしまうと,せっかく実験や調査をしてデータを集めてみても,誤った結論を導き出してしまうおそれがある.とくに,人間の行動や行為は非エルゴード的なものの代表であるため,その取扱いには十分な注意が必要である.非エルゴード性の「罠」を避けるためには,十分多数の情報源(文脈によっては,サンプル,被験者,モニターと理解してよい)を集めてこなくてはならない.しかし,単に数を集めれば良いというものではなく,その集め方についても慎重に検討する必要がある.たとえば,前述の喫煙率調査のやり方を改善するため,100人の被験者を集めることにしよう.100人くらい集めれば,個性の違いを平均化して正しい推測ができそうであるが,煙草の自動販売機の前で100人にアンケートを取るのはマズイやり方である.自販機の前をウロウロするという行為と,喫煙行動との間には強い相関があると考えられるからである.この場合であれば,喫煙行動と全く相関のないやり方,たとえば電話番号をランダムにダイヤルする等の方法で被験者を集めなければならない.

上で述べたような人工的な例であれば比較的わかりやすいが,我々が日常生活で接するのは,もっと微妙でわかりにくいものである.たとえば「日本人は1日平均50通のメールを受信する」といったレポートを目にする機会もあるが,その調査方法をよく調べてみると,パソコンサイト上のアンケートだったりする.膨大な数のメールへの対応に忙しくて,アンケートに回答する時間すら持ち合わせていない人は,最初から調査の対象に入れてもらえないのである.これなど,上で述べた「自販機前でアンケートを取る」のと大差ないように思われるが,この数字だけを信じて何か新しいビジネスなんかを立ち上げてしまうと,痛い目に遭いそうである.

kaji-fig4あるいは,携帯会社の電話の「つながりやすさ」を評価するのに,その会社と契約している人をモニターに選んで発着信の成功率を調べた,といった結果を見ることもあるが,あれなどもエルゴード性について理解しているのか,甚だ疑わしい.言うまでもなく,携帯電話の「つながりやすさ」は,いつ,どこに居るかという個人の行動パターンと密接に関係している.「ある携帯会社のカバーエリアにいる確率が高い人」がその会社と契約しているのだから,契約者をモニターとして調査すれば,「つながりやすさ」が高く出るのは当然であろう.

身近な問題として

世間に出回っている調査結果を笑うのは簡単であるが,研究活動を行う者にとっては,この問題は他人事ではない.とくに情報科学の分野では,ユーザの利便性や操作性を改善するタイプの研究が少なからず行われている.そのような研究の良し悪しを決めるのは,突き詰めていけば人間の主観的な評価である.被験者アンケートにより提案手法の有効性を確認しました,という学会発表を聞く機会も多いが,その被験者が同じ研究室の友人だったりすると,とたんに結果の信ぴょう性が疑わしくなる.人間を対象にした研究を行うにあたっては,非エルゴード的な対象物を取り扱っているのだということを肝に銘じておきたいところである.

おわりに

膨大なデータを統計的に読み解く能力の重要性は高まる一方である.しかし,数字として表れた情報だけを見て,その情報が生み出される「仕組み」に思いを致さないのは,情報の専門家ならずとも褒められたものではない.もちろん,誤った分析結果を流布する者の責任は問われなければならないが,そのような不正確な議論を盲目的に受け入れることも,ある意味同罪であるといえる.幸い,情報科学の先達は,既に多くの発見をしてくれている.学ぶべきことは,手元の教科書に書かれているかもしれない.そのことに気付くか,気付かないかは,学ぶ時の意識の持ち方次第である.教科書を読みなおして,何かを「再発見」するようでは,全然ダメなのである.

 

数理モデル?なにそれ?おいしいの?

池田和司 (教授): おいしいんです.数理モデルはいろいろな現象を数式で表したもので,数式にすることでその性質をより深く知ることができ,またある操作をした時にどんなことがおこるかを予測することができるようになります.数理情報学研究室ではこの数理モデルを利用して,脳情報学および適応システムを中心とするさまざまな問題を解決するとともに,新たな数理モデルを開発したりその性質を解析したりしています.
では,実際に数理モデルを使って研究をしている人に,どんな現象をモデル化してどのようにおいしいのかを聞いてみましょう.

小西卓哉 (D2): 私は数理モデルを関係データに応用する研究をしています.関係データとは複数の対象の関連を表したデータのことで,商品の購買履歴やソーシャルネットワークのようなWeb上のデータがその代表例です.他にも脳の神経ネットワークや遺伝子の相互作用情報も関係データとみなせ,自然科学の様々な場面に現れます.
このような関係データのための数理モデルには様々な方法がありますが,私は潜在変数をもつ確率モデルに注目しています.例えば商品の購買履歴にSF映画のDVDばかり買っているユーザが何人かいるとします.そうすると,このユーザたちは「SF映画好き」という潜在的なグループに属していそうだと推測できます.確率モデルは,このようなグループを潜在変数としてデータ(購買履歴)から推定できる方法です.潜在的グループを推定できれば,SF映画好きのユーザが買っている商品を別のSF映画好きのユーザにオススメしたり,興味の近いユーザを発見して紹介してくれるシステムが作れます.実際,私達が日々接しているWebサービスの多くに,このようなモデルが導入され,成功を収めています.関係データへの確率モデルの応用は,数理モデルが現実社会で活躍している例といえます.
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山田達也 (D2): 私は生物現象のモデリングをしています.対象としているのは神経軸索の誘導現象です.
脳のような複雑な神経ネットワークが構成されるときにも,素過程としては,互いに離れた神経細胞同士の接続が必要となります.その時には,神経細胞から伸びる突起先端の成長円錐が,きちんとターゲットとなる別の神経細胞まで誘導されなければなりません.しかし,成長円錐は,細胞内外の分子濃度,運動する足場との間に発生する力,電気的なポテンシャルなど,様々な物理量を感知して運動を行うため,モデリングはそう簡単ではありませ
ん.
私はそのような現象を「物理量の変換」という素過程の連鎖と捉え,成長円錐が従う偏微分方程式の構築を行っています.また,机上の空論としないために,統計的な手法を用いて生物学的な実験データとの整合性やモデルの妥当性についての評価も行っています.
成長円錐の運動メカニズムを知ることによって,神経軸索の配線を自由に制御することが可能になるかもしれません.それが,脊髄損傷に対する再生医療の一助となればうれしいことです.
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小出真子 (D1): 絵画の評価なんて個人に依存したものだから定量的には扱えない.一般的にはそう思われていて,私自身も長年そう思ってきました.しかし「個人に依存」とはいっても,芸術の評価には普遍性があります.ただし,画家はその普遍的な価値を理解出来ますが,一般の方はなかなか理解できません.そこで私は「画家・素人の鑑賞時視覚認知の違い」を軸に,この問題に取り組んでいます.
「違い」をみるためには何か基準を設けなければなりません.ここでモデルが利用できます.視覚認知は視線パターンと強く関係しており,視線パターンは人の低次視覚処理システムを模したモデルで予測できるのです.
私は「素人は画家より鑑賞経験が浅いので,高次処理は働いておらず予測モデルの通りに鑑賞する」という仮説を立て,実際に被験者に絵画を鑑賞してもらい,その時の視線を測定しました.その結果,確かに素人の視線はモデルに近く,画家の視線はモデルとは多少異なっていました.視覚認知は感性評価とはまた別の問題ですが,人の心は思っていたより単純なのかも,とも感じています.
数理モデルは人の内観にすら迫っていける可能性を秘めています.見えないものが見えてくるプロセスは魅力的です.
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加藤綾華 (M2): 私は自動車を運転するドライバーの行動をモデル化する研究をしています.免許を取ってから日の浅い初心者ドライバーや免許は持っているがめったに運転しないペーパードライバーは,普段から運転経験を詰んだ熟練ドライバーに比べて道路を安全に走行するための運転能力がまだまだ身についておらず,交通事故を起こしやすい傾向があります.そのため教習所では,シミュレータを使った訓練や危険予知トレーニングシートを使った学習を行っています.
私は,より効率的な非熟練ドライバーの運転能力向上の訓練を目指して,運転中の安全確認やハンドルやアクセル操作などが非熟練ドライバーと熟練ドライバーでどのように違うのかを明らかにしたいと考えています.そのため,それぞれの運転操作や視線を計測する実験を行い,運転行動を説明できるモデルを構築しています.モデルの作成によって運転行動をより深く理解すれば,より効率的な指導や訓練が実現するでしょう.
この研究の成果は,非熟練ドライバーの交通事故を減らすだけでなく,私を含めこれから免許を取得する人たちにも役立つと思っています.
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山村頼子 (M2): 私はてんかんのモデルを作っています.てんかんは脳の異常な電気活動に由来するけいれんや意識障害などの発作を主な症状とする病気で,主に薬で治療をします.それでは治せない患者さんには外科手術を行い,異常な電気活動を起こしている脳部位(てんかん焦点といいます)を切除します.そのため,後遺症が残ることがあります.
外科手術よりも脳に負担をかけない新しい治療法として,近年,局所脳冷却という手法が注目されています.これは,てんかん焦点周辺を冷やすと発作が止まるという性質を利用しています.
ところで,てんかん焦点を冷やすと発作が“クールダウン”するのは何故でしょうか.一見,直感的に納得できそうにも思える現象なのですが,実はその仕組みはよく分かっていません.そこで,数理モデルの出番です.
私は,てんかん焦点のモデルを計算機上に作って動かしてみることで,冷却がてんかん発作を止める仕組みを明らかにしようとしています.例えば,脳を冷やした時に細胞膜上のイオンチャネルに起きる変化が発作を止めるかどうかを調べるため,モデルの中でイオンチャネルの挙動を表す式だけに温度の変数を入れてシミュレーションを行います.実験結果と違う結果が出たら,イオンチャネルだけでなくシナプスにも温度依存性を入れてみる,などという具合に,モデルの挙動が実際の現象に近づくように改良していきます.
このモデル研究を活かして,患者さんの負担の小さいてんかん治療法を開発できたら,と思っています.
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研究も人間関係もインタラクティブ

山本:助教の山本です。まずは簡単な自己紹介と、それから研究内容を。

欅:D3の欅です。私は博士後期課程から入学しました。修士までは情報検索が主の研究室にいたのですが、進学してもっと幅広く学びたいという気持ちが強くて、メディア処理やユーザインタフェースの研究をしているこの研究室に来ました。

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現在、XML部分文書検索の研究をしています。普段インターネット上で検索しても、文書中から必要な情報を自分の目で探す必要があり、苦労して全部読んでも欲しい情報はなかった、ということがよくあります。取り組んでいるXML部分文書検索は、検索エンジンがどのあたりを読めば良いか要点部分を示してくれます (図1)。読むべき箇所が一目瞭然なので、ユーザが楽できます。これまでは正確な検索を研究していましたが、最近は実用という観点から、文書が大幅に更新されても正確かつ速く検索結果を提示する研究に力を入れています。しかし、正確さを取れば遅くなり、速さを取れば正確でなくなり、そう簡単な話ではありません。

図1: XML部分文書検索システム
図1: XML部分文書検索システム

藤本:D2の藤本です。学部3年の初めにAR技術を比較的簡単に試すことができるARToolKitというライブラリの存在をウェブで知り、早速ウェブカメラを買って家で試してみて衝撃を受けました。ARとはカメラの動画像にその場でCGなどを重ね合わせて表示する技術で、今でこそNintendo 3DSやPS vitaなどのゲーム機にも導入されていますが、当時は、これは世界を変える技術では!?とまで思ったような(笑)。あまりの衝撃に、自分の大学の大学院には行かず、しかも機械系から情報系のARToolKitの開発者である加藤先生の研究室に進学しました。

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現在の研究は、ARを用いて原子力発電所の解体作業を支援するシステムの要素技術について取り組んでいます。現在はマーカが印刷された紙面上にCGを表示するようなARが主流で、これはカメラから見た紙面の位置と姿勢をリアルタイムで推定することで実現していますが、実は応用すれば紙面だけでなく様々な3次元物体にもCGを表示させることができます。複雑な原子力発電所においてiPadやgoogle glassなどを通して、解体すべき場所や方法をカメラ画像に重ね合わせて表示してやれば、作業時間を減らしながらも、ミスを減らし、かつ安全に作業できます(図2)。しかし、問題は発電所限らずプラントに張り巡らされている金属パイプなどの反射物体です。金属は位置によって見た目が大きく変化してしまうため、正確に位置と姿勢を推定するのが非常に難しいのです。この問題を解決しようとがんばっています。

図2: AR技術をつかった作業支援
図2: AR技術をつかった作業支援

木村:M2の木村です。高専の専攻科のときにAR技術に興味が湧いて、ARといえば加藤先生!という短絡的な思いつきと、折角だから一度中身も見てやろう、という興味本位でこの研究室にインターンに来ました。研究室全体で行う研究会や、昼食会という先生と学生を交えたウンチク披露会のようなものにも参加して、なるほど研究だけでなく人間関係にもインタラクティブなのかと(笑)まあ感心して、ここに来た次第です。

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僕は、ユーザの地図読み能力を向上させるナビの研究を行っています。ナビのおかげで、元々地図を読むのが苦手な人でも簡単に目的地への移動することが可能になりましたが、地図が苦手な人にとって、せっかくの目的地への移動という体験学習なのに、頭を使わず機械の言いなりになって、ますます地図が読めなくなって、と。これはナビのインタフェースの問題と感じて、ユーザの学習につながるナビのインタフェースは作れないか、と思っています(図3)。なぜこんな研究を始めたのかと言うと、人間の生活をサポートするためのIT機器はより便利に、より親切に、という方向に進化してきたけれど、結局人間の学ぶ能力や機会を奪っているんじゃないかと思ったからです。IT機器による人間のサポートと、人間の能力開発を両立できれば、と思っています。

図3: 使用者に学習効果のあるナビゲーションインタフェース
図3: 使用者に学習効果のあるナビゲーションインタフェース

山本:僕もいつも思うけど、研究ってやっぱり難しいし、やっていると苦しいよね? でも、なぜか楽しい。

藤本:修士の時、紙に印刷された英単語の日本語訳を検索し、ARで紙の上に日本語訳を表示させるというAR辞書システムを作りました。これは面白いシステムだ!と自分では思っていたんですが、面白いだけでは研究としては成り立たず、このシステムによって、今までに明らかになっていない知見を得る必要があります。自分がつくったシステムが実際何の役にたつのか、数ヶ月間考え続けた時期が一番苦しみましたね。研究の進捗を報告する場でも毎回ボコボコにされますし(笑).でもこの時期に考えた研究の意義やその考え方が今も役に立っていると感じます。やはり苦労してなんぼということで。

木村:そうそう、僕も長い時間調べて考えて出したアイデアを先生に見せても一蹴されて、また考えてみて、見せて、また蹴られ、そしてまた考えてですから… 存在しないゴールを目指しているようでこれは辛いです。生みの苦しみって言うんですかね?とにかく、新しいアイデアを考える時間は辛い。今もまだまだゴールがはっきり見えないので苦しんでいますけど。

欅:私の場合は、ちょっと違って、研究のプロセスでの苦労はさておき、他の人に自分の研究を分かりやすく伝えるのが苦手で、今も特に苦労しています。

でも、苦労の反面、研究した成果を他の研究者から認められたときの大きな達成感は言葉で表せない。博士課程にもなると他の大学の知り合いの研究者の知り合いも増えますが、国内外の学会で斬新なアイデアを聞いたとき、そして出会う友人たちと研究について語り合うときはワクワクしますね。

藤本:そうそう、論文を読んで、世界中の優秀な研究者の方々が考えた様々なアイデアにふれると本当にワクワク。大好き。でも、いざ自分のテーマに取り組むとなると苦労するわけですが…。

学会に行けば似た目的で研究をしている人もいて、その場で初めて会った人と研究に関して意見交換できるのは本当にうれしいですね。学会ってそんなもん、というツッコミはなしで(笑)。海外で発表した時、休憩時間に「私も似たような研究を行っているけど、同じような実験をしたが良い結果が得られなかった。どんなことに気をつけて実験をすればよいの?」と、アドバイスを求められ、ちょっと偉くなった気分。

木村:まだ修士なので、先輩のようにワクワクという境地まではいきませんが、やっぱり楽しさと苦しさは表裏一体な部分がありますね。僕が苦しんで考えたアイデアが先生に受け入れられた瞬間は楽しいというか、嬉しいというか、正直ホッとしますね(笑)。

学会ではないですが、就職活動の面接で「ナビだけでなく他でも応用の効きそうな研究だ」と言われて、やはり自分のアイデアが認められるのはうれしいですね。あ、余談ですがこの面接通りました!

山本:そう言えば、欅君はいい成果を出しているよね?

欅:XML情報検索の国際的なコンペティションでINEXというのがあるのですが、研究していた検索エンジンが2010年にその正確さが世界二位になりました。最近の話ですが、情報検索の分野はそもそも図書館がベースにあり、文書が更新されるということはあまり考えられてこなかったのですが、ウェブ文書は日々更新されるのが普通だし、と思って、XML情報検索で文書の更新が頻繁に起きても、正確で速い!を実現したらこれが受けて。DEIM2013という国内の学会で最優秀論文賞をもらいました。労が報われた感じです。

山本:それは他の人に理解されるようになったということ?

欅:いやぁ、研究室の先生方はみんな同じ分野ではないので、先生方に「分からん!」と言われ続けながら鍛えられたから、外の研究者にも理解されるようになったのかなぁ、と。

山本:話は変わるけど、僕はこの研究室は研究テーマもメンバーもバラエティに富んでいて、そして自由だし、ここにいて良かった、と思うけど、君たちは?

欅:留学生が多いので、彼らとの日常のコミュニケーションを通して英語能力が向上したことでしょうか。ちょっと留学気分。

藤本:いやほんと、研究室の半分以上が留学生で、多種多様な価値観が入り乱れていますよね。研究以外にも、日常的に意見を交わせることは非常に刺激的です。英語の論文執筆や発表をひかえているとき,いつも力になってくれて本当に感謝してます。

山本:どおりで、いつも英語が上手いよう見えるわけだ。木村君は他に何かある?

木村:そうですねぇ、強く実感することは、研究の話をしっかり聞いてもらったり意見をもらったりと、この研究室のつながりの強さは有り難いです。インターンの時に感じたことは正しかったなと思います。また研究の話でなくても、欅さんや藤本さんのような悪い先輩と、冗談を言い合ったりできるのも特徴かも。

欅、藤本:冗談になってない!

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“Think Big” and have fun while you’re at it – What international PhD students are saying about doing research at NAIST –

By Christopher Michael Yap

Taking your education all the way to the PhD level can be a daunting prospect, but what about trying to get your PhD in a foreign country? And what if that country was Japan?

We recently sat down with four PhD students from the “IPLab” (Internet Engineering Laboratory) of the Nara Institute of Science and Technology in order to speak with them in depth and at length about their experience as foreign students pursuing their doctorate degrees from a graduate school in Japan.  As you will see, in terms of personality, career goals and research focus, each of these students is uniquely different from the last. But it’s what they share in common that is perhaps most interesting: that conducting research in Japan at NAIST is not only viable, but recommended and fun, too.

 

“50% Research/50% Business”

Hailing from the country of Senegal in the western-most part of Africa, 1st-year PhD candidate Doudou Fall stands impressively tall at just over two meters in height. This would otherwise be fairly intimidating if it weren’t for his oft-sighted gentleman’s grin.

Doudou is currently conducting research on Cloud Computing Security especially for Infrastructure as a Service (IaaS) Cloud systems.

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As it turns out, his tastes are equally complex. “I like eating really sophisticated food.” he claims in his characteristic baritone.

Aside from being a connoisseur of fine foods, Doudou is also fond of Soccer and Basketball.

 

“Only happy when it rains”

Jane Louie Zamora (or just ‘Louie’ for short) is a 2nd-year PhD candidate originally from the Southeast Asian island country of the Philippines, where her early childhood fascination with rain and weather grew into the focus of her current research on using mobile technologies to aid in the early detection of thunderstorms and localized heavy rain.

“Actually, I like looking at clouds,” Louie adds emphatically.
DSC01403-small “I actually love playing out in the rain, especially when I was young. But the one thing I like the most about my research is the complexity of weather. And how it is actually very unpredictable, like me” she says mischievously, as though confessing a secret.

 

“The Legend-to-be”

Karn, short for Sirikarn Pukkawanna, is a 2nd-year PhD candidate from Thailand and a self-styled Legend in the making. Her research focus, network anomaly detection using the more non-traditional, packet-analysis methods could very well be her road to Legend status in the IT field.  However, in true PhD, self-critical form, Karn suddenly reflects on the presumed downsides to being an industry legend: “Actually,” Karn proclaims,”I don’t want to be a legend, because you can only be a legend after you are dead, right?”

After a brief discussion about social media living legend Mark Zuckerberg, we were back on track towards Legendary status.

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“The Rebel”

Mysterious, soft-spoken, and ever to-the-point, Noppawat Chaisamran, otherwise known by his nickname Pun, when asked if he had any advice to give to prospective students, simply shook his head and merely said, “Please come.”

Originally from Bangkok Thailand, Pun is a 3rd-year PhD candidate in the IPLab where is research focus is centered on security of VoIP environments, particularly VoIP Spam and flooding attacks.

 

Cloud Computing, VoIP security, Network Traffic Analysis, and Mobile Weather Sensing are all fields of study that are as different from each other as the very people engaged in their respective studies. But that simply reflects the wide range of topics and the international palette covered and supported by the IPLab at NAIST. But how can all of these students from these different countries all be doing research in Japan? Surely they have all studied Japanese and understand it fluently. Will it be a problem for prospective students if they are unable to understand the Japanese language?

“I would say that it’s not a problem at all,” says Doudou in regards to classes. He primarily cites the NAIST International Program, which is composed of classes conducted in English and tailored specifically for international students. “You can take those classes easily and normally like it’s in your own country. And even if the classes are in Japanese, you can talk to the instructors directly and they will give you English versions of the class materials and the exam.”DSC01392-small

Pun adds, “You don’t need Japanese to graduate from NAIST. In my case, because when I was a Masters course student, there was no International Program, and at that time my Japanese was very poor, but I could pass the Masters courses.”

But how about needing Japanese language ability for your research? Can you get by without it?

“Yeah, I think you can,” says Louie. “But in my case, it would be better to know Japanese words or vocabularies that are related to my work. So if you want your work to be more in-depth, please learn a little bit, it will help.”

Karn adds, “I agree with Louie. It’s not a problem because you can still do research. You can speak in English with the professor about your research, or other people in the lab. It’s not a problem if you want to do research here.”

Alright, so we’ve established that being fluent in Japanese is definitely not a requirement to be able to conduct graduate-level research in Japan. So, on to the next question: what is it really like here at NAIST?

“The professors here are very open, and actually that’s what surprised me first” says Doudou. “Before you come to Japan, the thing that you hear about is that the professors are kind of inaccessible, but I realized that our professors are totally different. They want you to talk to them, and they encourage us to be very creative and proactive with our research, to share with everyone so that we can get advice and new ideas from everyone. That kind of cooperation is helpful for your research.”

Pun adds, “I think that NAIST has very good, well-maintained facilities, and there are a lot of experts from many fields who can help me to fulfill my research goals.”

On this point, all of the interviewees seemed to nod and agree.

“NAIST is the top-ranked national graduate school in Japan,” says Doudou. “They have many specialists, and after starting to study here, I realized that I will have a solid skill set and research profile by the time I graduate from NAIST.”

“It deserves to be #1,” adds Louie. “In terms of papers published, there are lots of people coming from NAIST. And they are from really good conference proceedings and conferences.”

So, we have established that NAIST is both and ideal place to feasibly conduct research in Japan, but what sorts of things have been learned or skills gained from being in such an ideal research environment?

Louie believes that the biggest thing she has gained as a result of being a member of the IPLab at NAIST is a greater tenacity and adaptability for her research focus. “You have to stick with what you want to do, but at the same time, you have to be flexible, to be able to adapt to the changes especially in your field of research. It can be really fast-paced, and just in a matter of months it’s a different technology again, so you have to adapt yourself to that.”

Karn has gained a wider awareness of the uses the research environment and culture.

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“I think that if you have a collaboration with another student, then that’s a good thing, even if that student’s research is related to your work or not. For example, even though Louie is researching weather forecasting, and it’s not related to my field of anomaly detection, we can exchange ideas, comments and input that could be useful for giving each other more creative ideas about our own fields.”

As for Doudou, he feels he gained a great deal of research experience, in terms of how to conduct research properly and being able to think creatively. “The first thing I said when I came to this lab was, ‘I’ve never done research before’. But that’s the thing you gain. I’m on my third year here and I gained a lot of research experience. In the beginning, I didn’t know what I was doing. And the first thing they told me was ‘think big’ and I learned how to be creative in research and in life in general.”

So as you can see, all the foreign students currently enrolled as PhD candidates at NAIST’s IPLab are alive and well. With the support of NAIST’s International Program for courses and the rich research environment provided by one of the top graduate schools in Japan, these students are not merely getting by; in fact, they are thriving.

“And,” Louie hastens to add, “We are having fun, too.”