Division for Foundations of Software

Division for Foundations of Software led by Professor Minoru Ito in graduate school of information science at Nara Institute of Science and Technology, JAPAN, focuses on the following most innovative and edge-cutting network technologies:

1. Intelligent Transportation Systems (ITS)

ITS Fig.1 An example of ITS system (image is from this website).

ITS aims to provide vehicle-to-vehicle (V2V) and vehicle-to-roadside communications so as to provide safety applications (like avoidance of car crash, notification of obstacles and safety message dissemination),  traffic information (like, position of surrounding cars, car velocity, moving direction) and infotainment services (like games, video viewing, music sharing). For example, when a car got involved in an accident, it can directly communicate with other cars to inform them the accident so that others get alarmed and make corresponding decisions.

2. Mobile Ad Hoc Networks

Mobile ad hoc networks (MANETs) represent a class of important wireless ad hoc networks with mobile users. Since the flexible and distributed MANETs are robust and rapidly deployable/reconfigurable, they are highly appealing for a lot of critical applications , like deep space communication, disaster relief, battlefield communication, outdoor mining, device-to-device communication for traffic offloading in cellular networks, etc.

MANETFig.2 An example of MANETs.

3. Cloud Computing

Cloud computing refers to the delivery of computing services (like software and information) from invisible providers hidden in cloud as illustrated in Fig.3. Instead of possessing one’s own hardware or software for computing task, one just needs to access these computing services from service providers through internet.

 

cloudFig.3 An example of cloud computing (image from wiki).

Regarding the above research topics, we focus on not only network applications that can be implemented directly in daily life, but also  theoretical modeling that reveals the laws underlining network phenomenon that help us to better design network protocols.

Recent Awarded Works in Applications

1. DICOMO2014シンポジウム 優秀論文賞:“GreenSwirl:車両走行効率向上を目指した信号制御および経路案内方式

XuFig.4 GreenSwirl System

研究概要:近年,大都市で深刻な交通渋滞が社会的問題となっている.特に渋滞を引き起こす原因の一つとして非合理的な交通信号サイクルがある.信号制御の技術としてGreenWaveが中国の複数の都市で実験されてきたが,結果は満足できるものではなかった.GreenWaveは一定速度で走行する車両は連続する交差点を常に青信号で通過できる技術である.GreenWaveの問題点として幹線道路のみに生成されるため,対向車線と横断道路の妨害、入口と出口の渋滞などを引き起こしてしまうことが挙げられる.この問題点を解決するために本稿では信号制御方式GreenSwirlおよび経路案内方式GreenDriveを提案する.提案手法では複数のGreenWave道路を渦巻き状に発生させ,GreenDrive案内方式で道路を走行する時間を見積もり,車両の平均走行時間を最小化する.提案手法の性能を評価するために交通流シミュレータSUMOを用いてシミュレーションを行った.ニューヨーク市マンハッタン島の道路網で車両の走行時間短縮効果を計測した結果,従来の手法と比べて提案手法は平均10〜70%程度,平均走行時間が短縮できたことを確認した.

2. DICOMO2014シンポジウム 最優秀プレゼンテーション賞 & 優秀論文賞: “地下街におけるスマートフォンの光を用いた避難誘導方式の提案

研究概要: 停電した地下街では,壁や床等が見えず,避難者は唯一の目印である避難誘導灯を用いて避難することになる.しかし先行研究によると避難誘導灯を利用する避難者は2割程度であることがわかっており,避難誘導の役割を十分に果たしているとは言えない.本稿では,避難者の携えるスマートフォンの発する光(バックライトとフラッシュライト,総じてスマホライトと呼ぶ)を用いた避難誘導方式を提案する.避難者が床を見た際に,避難すべき方向(避難方向)に光の帯が流れるように見えるよう,各スマホライトを制御する手法を取る.すなわち,避難者は光が流れるように見えた方向に避難すればよい.提案するシステムは避難誘導装置と避難者の携えるスマートフォンからなる.避難誘導装置は避難誘導灯にビルトインし,電源は避難誘導灯の蓄電池を利用する.また,避難誘導が必要な状況をスマートフォンに知らせるために,避難誘導装置は無線LANを具備することとする.停電が発生すると,避難誘導装置は,避難誘導アルゴリズムの開始を知らせるパケット(開始パケット)を近隣のスマートフォンにブロードキャストする.開始パケットを受け取った各スマートフォンは,あらかじめ設定されている自律分散型アルゴリズムにしたがって,避難者から見て避難方向に光が流れるように見えるよう,スマホライトを制御する.提案手法を評価するため,避難者の目線による3D動画を用いたシミュレーションを行い,アンケートにより評価した.アンケートの結果,避難者が床を見ることで,光が避難方向に流れるように見えることを確認した.

Recent Achievements in Theoretical Modeling

1. Source Delay in Mobile Ad Hoc Networks

Source delay, the time a packet experiences in its source node, serves as a fundamental quantity for delay performance analysis in networks. However, the source delay performance in highly dynamic mobile ad hoc networks (MANETs) is still largely unknown by now. This paper studies the source delay in MANETs based on a general packet dispatching scheme with dispatch limit f (PD-f for short), where a same packet will be dispatched out up to f times by its source node such that packet dispatching process can be flexibly controlled through a proper setting of f. We first apply the Quasi-Birth-and-Death (QBD) theory to develop a theoretical framework to capture the complex packet dispatching process in PD-f MANETs. With the help of the theoretical framework, we then derive the cumulative distribution function as well as mean and variance of the source delay in such networks. Finally, extensive simulation and theoretical results are provided to validate our source delay analysis and illustrate how source delay in MANETs is related to network parameters.

2. End-to-End Delay Modeling for Mobile Ad Hoc Networks: A Quasi-Birth-and-Death Approach

Understanding the fundamental end-to-end delay performance in mobile ad hoc networks (MANETs) is of great importance for supporting Quality of Service (QoS) guaranteed applications in such networks. While upper bounds and approximations for end-to-end delay in MANETs have been developed in literature, which usually introduce errors in delay analysis, the modeling of exact end-to-end delay in MANETs remains a technical challenge. This is partially due to the highly dynamical behaviors of MANETs, but also due to the lack of an efficient theoretical framework to capture such dynamics. This paper demonstrates the potential application of the powerful Quasi-Birth-and-Death (QBD) theory in tackling the challenging issue of exact end-to-end delay modeling in MANETs. We first apply the QBD theory to develop an efficient theoretical framework for capturing the complex dynamics in MANETs. We then show that with the help of this framework, closed form models can be derived for the analysis of exact end-to-end delay and also per node throughput capacity in MANETs. Simulation and numerical results are further provided to illustrate the efficiency of these QBD theory based models as well as our theoretical findings.

 

 

 

 

 

「隠れ身の術」の実現 – 視覚情報メディア研究室

拡張現実感・複合現実感に関する国際会議International Conference on Mixed and Augmented Reality(ISMAR),および国内の画像の認識・理解シンポジウム(MIRU)で受賞した「隠れ身の術」を実現する研究を紹介します.言葉で説明するよりも,映像を見ていただくのが一番わかりやすいと思いますので,まず以下の映像をご覧ください.

このように,映像中から現実の空間に存在する物体をリアルタイムで取り除きます.このような技術は「隠消現実感(いんしょうげんじつかん)」,英語では「Diminished Reality」と呼ばれており,映像中に仮想物体のCGを合成する「拡張現実感(Augumented Reality)」とは反対に位置付けられる技術です.1つ目の映像で,CGを合成するために用いられる拡張現実感のマーカ(映像中の黒い四角形)を映像中から取り除きつつ,仮想物体のCGを映像に合成することで,現実環境と仮想物体の真の融合を実現しているように,「拡張現実感」と「隠消現実感」を同時に行うこともできます.

実際の利用例としては,1つ目の映像のように,カメラ付きのポータブルゲーム機において,マーカを消しつつキャラクターのCGを合成することで,本当に家の中でキャラクターが動き回っているかのような感覚を味わうことが出来ます.また,1つ目の映像と2つ目の映像の内容を合わせることで,家具の買い替えを考えているときに,古い家具を取り除きつつ,新しい家具のCGを合成することで,実際に家具を買う前に部屋の雰囲気をシミュレーションすることもできます.

では,このような技術はどのようにして実現しているでしょうか?

まさに「隠れ身の術」のようなことをしています.
忍者が隠れる時に,自分のいる場所の背景の模様が描かれた布を自分の前にかぶせることで,後から追ってきた人に,そこには誰もいないかのように認識させるようなシーンを思い浮かべてください.以下のホームページのような感じです.
写真を使って忍者の隠れ身の術のように風景に溶け込むアート

「隠消現実感」でも,映像中で現実物体の上に,背景の画像を上書きしてやることで,まるでその物体がその場にないかのように見せています.

しかし,ここで1つ問題が生じます.あらかじめ取り除きたい物体の背景の画像を撮っておける場合はよいのですが,ある場所に行ってすぐに使いたい場合,そもそも消したい物体が壁に固定されていて,背景の画像を撮ることができない場合があります.
このような場合にはどうすればよいでしょう?

ここで用いられるのが「画像修復」,英語では「Image Inpainting」と呼ばれる技術です.

このように,1枚の写真から不要な物体を取り除き,その周辺に写っている背景と融合するよう,その領域内に画像を作り出す技術です.具体的には,同じ画像中から修復したい領域周辺のテクスチャと類似するテクスチャを探索し,それを修復領域内に合成することで自然な背景を生成しています.これを用いることで,映像中から取り除きたい物体の背景をあらかじめ撮影できない場合でも,自然な背景画像を生成し,利用することができます.

ただし,生成した背景画像をそのまま貼りつけるだけでは不十分です.カメラは動き回りますので,映像中での取り除きたい物体の位置や,背景の模様の見え方が変化します.このとき,少しでも背景の画像の位置ずれが起こってしまうと,明らかにそこに何かがあるのがわかってしまいます.また同様に,時間が経つにつれて環境の照明条件が変化することがあります.このため,生成した背景画像の色合いと現在の周辺の背景の色合いが異なると,違和感が生じます.

ここで,生成した背景画像とその周辺の背景との位置ずれや,色合いの差異が目立たないようにするため,コンピュータビジョンの技術を用います.具体的には,カメラを動かしながら撮影した映像中で特徴点と呼ばれる色や明るさが急激に変化するような箇所を追跡することで,現在カメラがどの場所にあり,どちらの方向を向いているかを計算することができます.また同時に,背景のおおまかな形状も計算することができます.これらの情報を用いることで,できるだけ位置ずれが目立たないよう背景画像を変形します.またこれに加えて,画像修復により背景画像を生成した時の画像と現在の画像との間で明るさや色合いの変化を計算し,生成した背景画像の色合いを調整します.このように背景画像の変形・色調整を行った上で,取り除きたい物体の上に上書きすることで,まるでその物体がその場にないかのような映像を作り出すことができます.

本記事で紹介しました隠消現実感技術以外にも,画像・映像を用いた様々なコンピュータビジョン・映像生成技術を研究しています.
ご興味のある方はぜひ視覚情報メディア研究室のホームページもご覧ください.
http://yokoya.naist.jp/

情報基盤システム学研究室 -Happyなネットワークを作ろう-

セキュリティ?   (猪俣敦夫)

私たちの生活においてお金やものが盗まれることとは異なり、いわゆる「情報」は盗難されたり漏えいしたりすると二度と盗まれる前の状態に戻すことはできません。形をもたなくとも「情報」は、個人にとってはプライバシーなどに関わる大切なもの、企業・組織にとっては資産、すなわち価値そのものであり、これらの「情報」を適切に管理、保護していくことは現代社会の常識になっています。しかし、この常識を実現するのは機械ではありません。人間です。計算機はあくまで人間のサポートにすぎません。

私たちの研究室では、形は様々な「情報」を適切に維持・管理できるための仕組みについて研究を進めています。また、それに付随して情報セキュリティに関する実践的な人材育成教育にも数年間取り組んで参りました。平成19年度には文部科学省による先導的ITスペシャリスト人材育成プログラム「産学官が連携する実践的セキュリティエンジニア育成プロジェクト:IT Keys」 http://it-keys.naist.jp/

そして平成23年度からは文部科学省による「分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワークenPiTセキュリティ分野:SecCap」 http://www.seccap.jp/

現在、7期生を受け入れるまでになり120名を越える修了生を輩出するに至りました。いずれも1つの大学の枠にとらわれず幅広い人的ネットワークのコミュニティを形成させることが大きな狙いです。

しかしながら、大学教育などにおいて情報セキュリティに関わるスキルや知識を適切に評価する手段が存在しないのが現状です。国内では、独立行政法人情報処理推進機構IPAが、いくつか専門的資格を提供しています。一方、世界的な情報セキュリティ資格団体である(ISC)2®では、情報セキュリティのプロフェッショナルとは何か、その要件とは、評価をどうすべきかなど”プロフェッショナル”をキーワードに議論を重ね、今や情報セキュリティの専門家資格としてはスタンダードとなっているCISSP®を始めとしたキャリアパスや専門領域に合わせた資格をグローバルで開発、提供してきました。また、(ISC)2 Japanでは アジア・パシフィック情報セキュリティ・リーダーシップ・アチーブメント(ISLA)と呼ばれる表彰制度を設け、2014年度のISLA表彰において当研究室准教授の猪俣が長年取り組んできた取り組みに対して評価がなされ、この度受賞いただくことになりました。

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日本からは、独立行政法人情報通信研究機構サイバー攻撃対策総合研究センター室長の井上大介氏、ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ株式会社CSTOの松並勝氏と猪俣の3名が受賞しました。

ISLA-2014-inomata-2

私たちは研究活動だけにとどまらず、社会に貢献できるような人材育成にも力を入れた教育にも注力してまいります。特に、情報セキュリティの分野は若手が活躍しやすい場です。少しでも興味をもった方がいらっしゃいましたら是非お気軽にお声がけください。
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数理情報学への誘い

数理情報学研究室では,様々な事象に関する情報に対して数理的手法を用いることで研究を行っています.我々の研究対象は多岐にわたっており,

  • 分子・細胞(例:酵素の活性,神経細胞の軸索伸長)
  • 組織・器官(例:手指や舌を司る筋群,てんかん患者やクモ膜下出血患者の脳活動)
  • 動物の行動(例:マウスの行動やジュウシマツの歌)
  • ヒトの行動(例:絵画鑑賞,運転行動など)
  • 社会(例:社会的ネットワーク内のグループ構造)
  • 自然環境(例:風況予測)
  • 数理的手法自体

などが挙げられます.形がなく目に見えないものもあれば,形あるものでもスケールが非常に小さいものから大きなものまであり,幅広く取り扱っていることが分かって頂けると思います.このような多様なテーマも数理情報学研究室の特徴の一つですし,それを実現可能にしているのが数理的手法だと言えます.これらの研究内容の全てを詳しくご紹介するのは難しいので,ここではそのうちの幾つかの内容に絞ってご紹介します.

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数理情報学研究室

神経細胞ネットワークモデルを用いたてんかんの病態
および
冷却療法効果のシミュレーション研究

てんかんは近年社会的にも注目されるようになりましたが,てんかんの治療のために外科的手術が必要になることもあるとご存知でしたでしょうか?薬による治療では十分な発作抑制効果を得られない場合にそのような外科的手術が必要になるのですが,より体へのダメージを伴わないような治療の方がやはり望ましいと考えられます.そのようなダメージの少ない新たな治療法の候補として,局所脳冷却療法が挙げられます.局所脳冷却療法は,頭蓋内に冷却用の素子を埋め込み,発作時にその発生源を冷却することで発作抑制を図る治療法です.数理情報学研究室ではHodgkin-Huxley型神経細胞ネットワークのモデルを用いて,この局所冷却療法の効果をシミュレートする研究を行っています.冷却によって神経細胞の過剰な同期を元の状態に戻すことは可能なのか,その時何℃まで脳を冷却すべきなのか,どのような指標を用いれば発作の予測をより高精度に行うことができるのか,などの問題についてシミュレーションによって有益な知見を得たいと考えています.

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神経細胞が結合している様子を表したイメージ図.
数式は個々の細胞の電気的活動を表したもの.

抽象画鑑賞時に画家が着目する特徴の特定

絵画,特に抽象画を鑑賞する時,一般の人にとっては着目すべきポイントがどこだか分からないこともしばしばでしょう.しかし,画家にとってはそのような着目すべきポイントが明白であるとされています.それが本当だとしたら,そしてそのポイントの特徴を知ることができれば,芸術的な素養がない人もそのような特徴を意識して見るよう訓練を受けることができるかもしれません.ところが,実際にそのようなポイントの特徴を明らかにしたいと思っても,その特徴を言語化することが難しい場合や,言語化できたとしても一般の人にとってその内容を理解できない場合などが起こりえると考えられます.我々は,絵画鑑賞中の画家の視線を実際に特殊な専用機器を用いて計測し,素人と異なる着目点およびその特徴を定量化することによって,この問題の解決を目指しています.果たして画家固有の着目点は本当に存在するのでしょうか?どのようなモデルならその着目点の特徴を適切に表現できるでしょうか?このような問いへの答えを探し求めています.また,将来的には画家特有の脳活動を捉える研究も行いたいと考えています.

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視線計測の様子と視点の比較のイメージ

動物の行動の解釈を目指した自動的定量評価

動物実験は生物学・医学・生理学・薬学など幅広い分野で実施されており, 動物の行動を観察・解析した結果が科学の発展や人類の健康・福祉の向上に大いに役立てられています. しかし, 動物の行動の観察は,未だに実験者の目や耳に頼って行われることが多い状況です.このような状況から,(1) 観察に伴う労力・時間的コストが実験者に生じること, (2) 主観的な評価が入ることによって再現性は必ずしも保証されないこと, などが問題となってきます. これら問題の解決策の一つとして, 被験動物の動画像や音声データに対して情報処理技術を適用することで行動を自動的に定量評価するような手法に期待が集まっています.実際に,数理情報学研究室ではマウスの行動を記録した動画データ,ジュウシマツの歌の音声データからそのような自動定量評価を行っています.この研究によって,これまで認識されてこなかった新たな行動の発見や,動物間のコミュニケーションの解明に繋がることを我々は期待しています.ここでは,マウスの行動解析についてもう少し深く紹介したいと思います.

マウスの行動を画像から自動的に評価しようと考えた時,幾つもの問題があることに気付かされます.(1) そもそもマウスの行動には未知のものが存在しうる,(2) 行動は全てで何種類あるのか不明である,(3) 行動を表現するには画像からどのような情報を抽出して用いるべきなのか既存の知見では十分に分かっていない,(4) 同一と考えられる行動を取っている場合でも姿勢等に様々なバリエーションがある,(5) 個体が異なれば,体型の違いが存在する,(6) 複数個体が存在する場合は一部の個体の身体部分が他個体によって隠されてしまうことがある,など枚挙に遑がありません.最初の2つの問題はノンパラメトリックベイズ法による解決を図っています.また,他の問題についても少しずつ,着実に解決して,動物行動の解釈の実現に向けて日々この研究に取り組んでいます.

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マウスの行動解析のための体部位・頭部方向推定


おわりに

私達の研究室で行っている研究の一部をご紹介しました.それぞれ内容は異なりますが,いずれも目に見えないもの,抽象的なものを,数理的な手法で捉えようという点においては共通しています.逆に言えば,数理的な手法を上手く用いることができれば,そしてその場合のみに,様々な現象の背後に隠れた『真理』を明らかにできるようになると言えます.

これまで述べてきた内容以外にも紹介したい研究内容がたくさんありますが,ここでは筆舌し尽くせそうにありません.紹介した内容にご興味をお持ち頂き,もっと深く知りたいとお思いの方,他の紹介したい内容がどのようなものであるか気になる方,そんな方々は数理情報学研究室までぜひ御連絡を頂けたらと思います.数理情報学研究室の扉の先には,『真理』へと続くまだ見ぬ深遠な世界があなたを待っています.

 

受賞・CICP採択などの報告(コンピューティング・アーキテクチャ研究室)

皆さん,こんにちは.コンピューティング・アーキテクチャ研究室 助教の高前田です.

最近,コンピューティング・アーキテクチャ研究室では,受賞やCICPプロジェクトの採択等,喜ばしいことが続いています.
今回は受賞やプロジェクトが採択された方々にお話を聞いてみたいと思います.


博士前期課程2年 田ノ元 正和 (Featured Poster Award @ IEEE COOL Chips 2014)

今年の4月に行われた国際会議IEEE Symposium on Low-Power and High-Speed Chips 2014において田ノ元君のポスター発表がFeatured Poster Awardを受賞しました。
まず、発表した研究内容について教えてください

発表のタイトルは“Performance Tuning of a Global Shallow-water Atmospheric Model on Xeon Phi”で、Global Shallow-water Atmospheric Model Simulation(浅水波方程式を用いた全球大気モデルシミュレーション)を、Intel社が開発しているXeonPhiというアクセラレータ(特定処理を高速化するハードウェア)上でいかにして性能を引き出すかということについて発表しました。あまり詳しくない方にはIntel版GPGPUだと思ってもらえるといいのですが、こういったハードウェアの性能をギリギリまで引き出すにはその特質を理解してコードを記述する必要があります。今回は平方根や除算といった時間がかかる演算の精度をわずかに犠牲にする、メモリのプリフェッチ(先読みによる事前取得)をプログラムの持つ特徴的なアクセスパターンに合わせて最適化するといった手法で性能を出すという方法をとりました。

NAISTに来てちょうど一年ほどでこのような発表をしたわけですが、研究を進める中で大変だったことなどがあれば教えてください

7月ごろまでは研究室内で基礎固めの教育を受け、そのあと9月までFPGAデザインコンテストに出場していたため、実際には10月以降の半年間での成果になります。大変だったこととしてはひたすら実験を繰り返したものの、あまりいい成果が出ない時期が長かったことですね。冬からは就活も始まり両立は大変でしたが、この期間にもあきらめずに取り組んだことで良い成果を得られたので就活ばかりしなくてむしろ良かったと思っています。今回の発表自体も就職面接のネタとして結構使えましたしね(笑)。 就職先選びにおいても、研究での経験が将来のなりたい自分をイメージするきっかけになりました。
もちろん今回の成果は一人の力ではなく、コンピューティング・アーキテクチャ研究室の先生方や先輩、同期、そして共同研究先の中国清華大学の方々の協力あってのものです。特に昨年秋に1か月間清華大学へインターンシップに行かせていただいたのはとても貴重な経験になりました。この研究で協力している清華大学のグループは現在世界1位のスパコン・天河2号を使って先の大気シミュレーションを実行していて、自分の成果が取り入れられるのが楽しみです。
他に感じたこととしては、今回の共同研究やポスター発表、普段の輪講や留学生とのコミュニケーションまで、NAISTに来て以来英語を使う機会がとても多くなりグローバルな大学院だなとあらためて実感しました。

今後は展開などについて教えてください

現在は少し趣向を変えた別分野のアプリケーションの高速化に取り組んでいます。修了までにもう一度対外発表を行いたいと考えています。

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博士後期課程1年 Yuttakon Yuttakonkit (CICP (NAISTの学生主導研究プロジェクト) 採択)

Project name is “BikePad: A new experience to control any console game using your bike”.

Goal

Given an increasing awareness of healthcare and fitness in today’s busy society, exergaming (i.e. video games that are also a form of exercise) has gained considerable amount of attention in current game industries. A number of exergaming products nowadays have provided many kinds of workout experiences. However, we have concerned that the existing products are still long way to be considerable equivalent to what we can benefit from the fitness machines. Therefore, we introduce BikePad, a gaming peripheral set that utilizes real bicycles as a gaming input.

BikePad enables players to realistically utilize their own body to throttle, accelerate, turn, and slow down through their real bicycle. Thus, BikePad is possibly the first flexible exergaming peripherals that are considerable with a workout experience on the real exercise machine. BikePad would be able to deliver a dramatically better experience for a wide range of games, especially for the racing type. It is where fitness truly meets entertainment.
Introducing features

BikePad aims to provide enthusiastic workout while playing your favorite game. Additional highlighted features can be also enclosed but not limited to the following list:

  • A different way towards virtual workout competition, inherently with multiplayer challenging
  • More exciting way for people who are keen on fitness enthusiast to enjoy their workouts through gaming
  • Improve social relation between friends and in family
  • Reduce chance of accident for a cycle enthusiast to ride indoor when their fitness condition may not meet
  • Induce people to get off the couch and be more active

Design and Implementation plan

We have initially selected Xbox as a gaming platform for BikePad, as the Xbox provides sophisticated development kit with some extensible devices such as Kinect. There are multiple device between the bicycle to Xbox console which requires a broaden area of expertise to manipulate the new peripheral device. The hardware design, low-level programming, and some of network sensors will be reviewed and explored in order to inject cycling input into the game console.
While ordinary bicycle static resistant platform called, trainer can replicate outdoor resistant and feel. But it’s not capable to provide all the features and sensors that we can simply adapt for our purpose. Many kinds of sensor technologies are essential to enable a realistically game controlling experience. The sensors that we have investigated so far are velocity (speed), paddle rotation rate (cadence), maneuver, and heart rate.

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助教 高前田 伸也 (情報処理学会 研究会推薦博士論文)

今回,情報処理学会の研究会推薦博士論文に先生の博士論文が選出されました.どのような内容の論文なのでしょうか?

論文のタイトルは”Multi-FPGA based Prototyping Framework for Emerging Manycores”で,内容は,コンピュータの核となるCPUそのものの,ハードウェア・ソフトウェア構成の評価を効率化する高速シミュレーションシステムと,評価対象ハードウェアのモデリングを簡単にするための設計フレームワークに関する研究をまとめたものです.

背景としては,最近のCPUは,パソコンに使われるような比較的大きなものでも,スマートフォンなどの携帯機器に使われる小さなもので,いずれも1つのチップ上に複数のコアを搭載する,マルチコア構成が主流ですよね.今も昔も,半導体プロセス技術の進化によるトランジスタの微細化の恩恵で,1つのチップ・同じ回路面積で利用可能なトランジスタの数は増え続けています.ムーアの法則という言葉は皆さんも耳にしたことがあると思います.以前は,半導体プロセスの微細化により増えたトランジスタを使って,単一のプログラムの処理性能を高めるため,言い換えれば,命令レベルの並列性を抽出するためのハードウェア拡張を行うことが一般的でした.しかし,ポラックの法則で知られるように,仮に2倍のトランジスタを投入して,複雑なハードウェアを追加しても,単一コアの性能は高々1.4程度にしかなりません.そこで,登場したのがマルチコアです.増えるトランジスタを単一のコアの増強に使うのではなく,搭載するコア数自体を増やしてしまうアプローチです.各コアの大きさはそのままで,数を2倍したときに,プログラムが完璧に並列化されていれば,2倍の性能向上が達成できるわけです.そして,最近では,汎用のマルチコアCPUだけではなく,比較的小型なコアを多数集積して並列性能を高めたメニーコアや,超多数のスレッドを同時に実行することで,メモリアクセスなどの実行レイテンシの長い命令のオーバーヘッドを隠蔽するGPU,そして,アプリケーションに特化したデータパス・メモリシステムを形成して高効率化を目指すFPGAなど,様々な計算リソースを扱わなければなりません.

博士論文では,多数のコアを1つのチップに集積するメニーコアアーキテクチャの評価を高速化・高効率化するための仕組みとシステムを提案しています.通常,プロセッサアーキテクチャ研究では,何か新しいアイデアを思いついたとき,ソフトウェアで実現された架空のCPUのシミュレータを用いて評価するのが一般的です.ソフトウェアの世界に,自分がシミュレーションしたいCPUを,クロックサイクルレベルやレジスタ転送レベルという,非常に細かい粒度で振る舞いを定義してシミュレーションすることで,実際にLSIを作成することなく,提案アイデアの有用性を評価するわけです.しかし,そこで問題となるのが,シミュレーション速度です.現存するCPUの上で,架空の将来のCPUをクロックサイクルレベルで正確に模倣するわけですから,実際のLSIと比べると,その速度は非常に低速となります.そこで,用いられるのがFPGA (Field Programmable Gate Array)です.FPGAとは,使う人が回路構成自体を書き換えることができる,柔らかいLSIです.FPGAそのものは汎用のLSIですから,比較的安価に手に入れることができます.FPGAを使えば,一から評価用のLSIをおこすよりも,遙かに安価に,提案アイデアを持つCPUを実際のハードウェア化ができるわけです.このような方式をFPGAプロトタイピングと言います.

しかし,FPGAを用いたプロトタイピングにはいくつか課題があります.ひとつは,マルチFPGAシステムの使いづらさです.シミュレーション対象のCPUの規模がFPGAの回路規模よりも大きな場合には,シミュレーション対象のプロセッサを分割して複数のFPGAにマップしなければなりません.そのときに分割前と同じようにサイクルレベルで正しくプロセッサをシミュレーションするには,FPGA間でシミュレーション情報をお互いに送り合って同期を取らなければなりません.そのためには本来のシミュレーション対象には必要のないハードウェアを追加し,同期ができるようにシミュレーション対象のハードウェアデザインを書き換える必要があります.これがやればいいじゃん?と言うのは容易いのですが,実際に正しく実装するのは結構大変です.また,普通のプロセッサはチップ内にキャッシュなどのメモリ要素を持っているので,これらも一緒に実装する必要があります.FPGAはチップ内にブロックRAMという高速で扱いやすいメモリを持っているので,これを使えばキャッシュ等もシミュレーション対象できます.しかし,FPGAが持つこのブロックRAMの容量というのは限られているので,シミュレーション対象のキャッシュ量を増やしたりする場合には,FPGAチップ外に設けたDRAMなどの大容量メモリを使わざるを得なくなります.そうすると,先ほどのマルチFPGAへの分割のときと同じように,クロックサイクルレベルでのシミュレーションの正確性を保つのが途端に面倒で難しくなります.

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博士論文の私の提案は,フレームワークによりFPGAプラットフォームが持つオンチップ・オフチップ両方のメモリシステムとFPGA間の通信を抽象化してしまおうというものです.シミュレーション対象からみれば都合の悪い,FPGAプラットフォーム側のハードウェア要素をすべて,1クロックサイクルでアクセスできる理想的なハードウェアとしてプロトタイプ設計者に提供します.大容量のブロックRAMだったり,直ぐにデータが届くFPGA間通信ポートといった,理想化されたリソースをあたかも使えるものとして,システムを設計できるので,開発が簡単になります.そしてフレームワークが持つツールチェインにより,実際のFPGA上に実現できる回路構成に自動的に変換をします.このときに,オフチップのDRAMやFPGA間通信は実際のものに差し替えられます.同時に,クロックサイクルレベルでのシミュレーション結果の正しさを保証するために,制御用回路を自動で合成し追加します.

評価としては,実際のFPGAプラットフォームで本フレームワークの善し悪しを評価しました.無限大のオンチップメモリを持つ理想的なFPGAが存在したとして,その上での架空のプロセッサのシミュレーション速度と,実在のFPGA上での架空のプロセッサのシミュレーション速度を比べたところ,実際のFPGAを用いた場合のシミュレーション速度は理想的なFPGAのおおよそ半分程度であることがわかりました.つまり,実在するFPGAとオフチップDRAMを組み合わせて作り上げたシミュレーションシステムでも,フレームワークの支援により,開発効率を高めながらも高速に,架空のハードウェアをシミュレーションできるということです.また本フレームワークを用いて,100個のFPGAを接続したマルチFPGAシステム上に128個のコアを持つメニーコアプロセッサを実装し,評価しました.その結果,手動でFPGA間の調停回路等を追加したものと同等の性能を,フレームワークによる抽象化を用いても達成できることが確認できました.

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今後の研究について教えてください

これまではFPGAをLSIのプロトタイプとして利用してきましたが,最近はFPGAを用いた高性能計算の方式について研究を進めています.FPGAを使えばアプリケーションに特化した,演算パイプラインをハードウェアとして形成できるので,アプリケーションがうまくハマれば,高い性能だったり,高い電力効率を達成できることが知られています.しかし,FPGA上に計算用回路を構成するためには,一般的にVerilog HDLやVHDLといったハードウェア記述言語でクロックサイクルレベルですべての振る舞いを定義しないといけないのですが,これが結構大変です.どれくらい大変かというと,ソフトウェア開発に例えれば,アセンブリ言語だけを使ってソフトウェアを開発するのを想像して貰えればわかると思います.これを解決するための方法として,C言語やJavaなどの一般的なプログラミング言語で記述したソースコードをハードウェア記述に変換する,高位合成コンパイラというものが登場し広まりつつあるのですが,簡単なアプリケーション以外では性能がイマイチだったりと,まだまだ発展途上です.

そこで現在,高い性能と開発効率の両立を目指して,高位合成技術として,メモリシステムの抽象化を用いた,設計のポータビリティと性能を両立するFPGAアクセラレータの開発フレームワークPyCoRAMというものを開発しています.性能にクリティカルな演算パイプラインは従来のHDLでモデリングしつつ,メモリやI/Oといったアクセラレータの外とのやりとりは,スクリプト言語のPythonを用いた高位合成処理系で開発することで,開発効率と性能を両立します.アプリケーションとしては,密行列積やステンシル計算といった,高性能計算の王道的なアプリケーションだけではなく,グラフ処理などの今ホットなアプリケーションを開発し,FPGAを用いた計算機システムの可能性を追い求めています.

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以上,コンピューティング・アーキテクチャ研究室からでした.長文失礼しました.
見学・インターンシップ等は随時受け付けております.コンピュータの高速化・低消費電力化・高信頼化に興味のある方,お待ちしてます!
Facebookページもよろしくお願いします!


文責:高前田 (shinya_at_is_naist_jp)