ソフトウェア基礎学研究室(教授:伊藤 実)は,2015年4月にモバイルコンピューティング研究室(モバ研)へ変わりました! モバ研では主に,実社会に存在する問題を抽象的に捉えて数学的にモデル化し,計算機で効率よく解くためのアルゴリズムを考案しています.今回はモバ研で行っている研究のいくつかをテーマに分けて紹介します.
高度交通システム
交通渋滞は以前から大きな社会問題であり,二酸化炭素排出などの環境への悪影響や社会活動の滞りなどによって, 社会に悪影響を及ぼしています.当研究室では高度交通システム(Intelligent Transport Systems; ITS)を利用し,交通の効率化や快適化,渋滞の軽減のための研究を行っています.
渋滞を引き起こす原因の一つとして非合理的な交通信号サイクルがあり,信号制御の技術として,GreenWaveが中国の複数の都市で実験されています.しかし,GreenWaveには対向車線と横断道路の妨害,入口と出口の渋滞などを引き起こしてしまう問題があります.そこで研究[1]では,GreenWaveの問題を解決する信号制御方式GreenSwirlと経路案内方式GreenDriveを提案しています.提案手法の性能を評価するために交通流シミュレータSUMOを用いてシミュレーションを行い,ニューヨーク市マンハッタン島の道路網で車両の走行時間短縮効果を計測した結果,従来の手法と比べて提案手法は平均10~70%程度,平均走行時間が短縮できることを確認しました.
モバイル環境を想定したシステムやサービス
地下街が停電し,避難が必要である状況では,地下街が停電すると,壁や床等が見えない状況下におかれます.そのような状況下では唯一の目印である避難誘導灯を用いて避難することになります.しかし先行研究によると避難誘導灯を利用する避難者は2割程度であり,避難誘導灯は避難誘導の役割を十分に果たしているとは言えません.研究[2]では,避難者の携えるスマートフォンの発する光(バックライトとフラッシュライト,総じてスマホライトと呼ぶ)を用いた避難誘導方式を提案しています.提案手法を用いない3D動画,提案手法を用いた3D動画を著者らの所属する学生3名に視聴させ,5つの評価項目に対して5段階評価で評価するアンケートを実施し,提案手法ありは提案手法なしに比べ,高評価の割合が高いことを確認しました.
A payment system in a disaster area is essential for people to buy necessities such as groceries, clothing, and medical supplies. However, existing payment systems require the needed communication infrastructures (like wired networks and cellular networks) to enable transactions, so that these systems cannot be relied on in disaster areas, where these communication infrastructures may be destroyed. In [3], we propose a mobile payment system, adopting infrastructureless mobile adhoc networks (MANETs), which allow users to shop in disaster areas while providing secure transactions. Specifically, we propose an endorsement-based scheme to guarantee each transaction and a scheme to provide monitoring based on location information, and thus achieve transaction validity and reliability. Our mobile payment system can also prevent collusion between two parties and reset and recover attacks by any user. Security is ensured by using location-based mutual monitoring by nearby users, avoiding thereby double spending in the system.
並列計算・分散コンピューティング
著者らは,ライブ放送のための分散型映像処理システムを研究開発しています.本システムでは,映像処理サーバが映像撮影端末から依頼された映像処理を行います.多数の映像撮影端末が映像処理サーバに映像処理を依頼すると通信負荷や処理負荷が大きくなって映像処理に時間がかかり,ライブ放送を円滑に行えません.そこで研究[4]では,映像処理を依頼する映像処理サーバを選択して映像処理サーバにかかる負荷を分散させる方式を提案,実装しています.提案方式では,複数の映像処理サーバがある場合に,映像処理内容や負荷に応じて処理を依頼する映像処理サーバを,P2P型モバイルエージェントシステムを用いて選択します.複数の映像処理サーバと映像撮影端末を用いて実験し,映像処理を完了するまでの時間への影響を確認しました.
最後に……
モバ研の詳細やそのほかの研究内容については,研究室のWebサイトをご覧ください.見学や質問も随時受け付けていますので,お気軽にお問い合わせください!