ソフトウェア工学研究室2013

ソフトウェア工学研究室では、ソフトウェア開発に関わる様々な問題を研究しています。幅広い問題に取り組むため、国内外の研究者との連携に力を入れています。そんなソフトウェア工学研究室の2013年を振り返ってみます。

5月

3月14日から5月20日には、カセサート大学(タイ)のJirayus Jiarpakdeeさんがインターンシップにやってきました。オープンソースソフトウェア開発のリリースと開発者のサポートについて研究し、インターンシップ成果報告会では、「When Should We Move to the Next Version?」というタイトルで発表しました。写真は小笠原研究科長からインターンシップ修了証書を受け取るJirayusさんです。辛いものが苦手でビールが大好きなJirayusさんは、いつも元気いっぱいでした。Jirayusさんは帰国後インターンシップでの成果等が認められ、見事に国費外国人留学生(大使館推薦)に選ばれました。2014年10月に本学へ入学予定です。また一緒に研究できる日が楽しみです。

6月

6月18日から8月21日には、ミネソタ大学(アメリカ)のErik S. SteinmetzさんがJSPSサマープログラムでやってきました。Erikさんは囲碁の研究をしています。コンピュータ将棋はかなり強くなりましたが、囲碁はまだまだ発展中のようです。四国八十八夜を全て巡ったほどの日本好きで、日本語もお上手でした。

6月5日から16日には、本研究室博士前期課程2年の中川尊雄さんが共同研究で九州大学へ行ってきました。中川さんは、脳血流を計測してプログラム理解行動を定量化する研究をしています。この共同研究の成果は、ソフトウェア工学の基礎ワークショップで発表しました。

7月

7月10日から12日に開催された、マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2013)シンポジウムで、本研究室博士前期課程2年の林宏徳さんが「OSS開発における一般開発者の協調作業と不具合の再修正に関する一考察」という発表を行い、最優秀プレゼンテーション賞(301件中4件受賞)、優秀論文賞を受賞しました。

8月

6月24日から8月30日まで、カセサート大学(タイ)から2013年第2期のインターンシップとして、Natthakul PingclasaiさんとRattamont Teekavanichさんがやってきました。Natthakulさんは、ソフトウェア開発プロジェクトで作成される大量の課題リポートをバグとそれ以外(機能追加やドキュメント更新依頼など)に自動的に分類する研究をしました。Rattamontさんは、課題レポートから修正すべきソースコードを特定する研究をしました。インターンシップ成果報告会でもしっかり発表を行い、修了証書を受け取りました。どちらの研究もその後国際会議で発表しました。

9月

9月13日から12月14日までの3か月間、本研究室博士前期課程2年のChakkrit Tantithamthavornさんが、今年(2013年)に本校と学術交流協定を締結したクィーンズ大学(カナダ)へインターンシップとして訪問しました。Chakkritさんはインターンシップ期間中にソフトウェアの欠陥混入箇所を自動特定するための研究を行い、国際会議論文を執筆しました。現在も共同研究は進行中です。

9月17日から10月1日まで、九州大学から大阪陽さんがインターンシップにやってきました。大阪さんは、インターンシップ期間中に、オープンソースソフトウェア開発でのパッチ採択の実情調査を研究しました。今後もこの内容で共同研究をしていきます。

10月

10月28日に、本研究室助教の伊原彰紀先生が共同企画したMSRアジア・サミットが京都で開催されました。MSR(Mining Software Repositories)とは、多様かつ大量にあるソフトウェア開発データのリポジトリから有用な知見を発掘することを目指す、近年ホットな研究分野です。この分野で活躍する若手の研究者に講演してもらうMSR スクール・アジアというイベントを本研究室が中心となって毎年開催しています。今年は、10人のトップ研究者を招待するMSRアジア・サミットというイベントを初めて開催し、70人以上の参加がありました。多くのトップレベルの発表を聴くことができる大変貴重な機会になりました。本研究室の学生は前準備から発表まで大活躍してくれました。

11月

11月28日から29日に開催された、グループウェアとネットワークサービス ワークショップ 2013(GNWS2013)で、本研究室博士前期課程2年の林宏徳さんが「OSS開発におけるレビュアー間の合意形成の分析」という発表を行い、ベストペーパー賞を受賞しました。

11月28日から30日に開催された、ソフトウェア工学の基礎ワークショップ FOSE 2013で、本研究室博士前期課程2年の内垣聖史さんが「学習データ計測時期による欠陥モジュール予測精度の比較」という発表を行い、IEEE Computer Society Japan Chapter FOSE Young Researcher Award 2013を受賞しました。

12月

12月2日にタイで開催された、International Workshop on Empirical Software Engineering in Practice 2013(IWESEP2013)で、本研究室博士前期課程1年の尾上紗野さんが「A Study of the Characteristics of Developers’ Activities in GitHub」という発表を行い、Best Student Paper Awardを受賞しました。また、昨年本研究室へインターンシップに来ていたJohn Boaz Leeさん(アテネオ・デ・マニラ大学,フィリピン)が「Patch Reviewer Recommendation in OSS Projects」という発表を行い、Best Presentation Awardを受賞しました。

 

12月2日から18日まで、アリゾナ大学(アメリカ)のChristian Collbergさんが滞在されました。Christianさんはセキュリティの専門家で、セキュリティの研究もしている本研究室准教授の門田先生を訪ねて来られました。初めての日本を堪能されていたようです。

12月1日から12月31日までの1か月間、本研究室博士前期課程1年の坂口英司さんが、オウル大学(フィンランド)へインターンシップとして訪問しました。坂口さんはインターンシップ期間中に欠陥予測のモデル構築に関する研究を行い、現在も継続して共同研究を進めています。

ソフトウェア工学研究室の最新情報はこちらから
http://se-naist.jp/
https://www.facebook.com/selabnaist

ロボティクス研究室

はじめに

今回は、ロボティクス研究室を紹介したいと思います。我々はスタッフ5名、学生27名で使えるサービスロボットを実現すべく、日夜研究に励んでいます。研究の興味が近い人が集まって3つのグループを作っているので、各グループから1人ずつ記事を書いてもらっています。記事を読んでロボティクスや研究に興味が出たら、オープンキャンパスやいつでも見学会で見学に来てください!(助教 池田 篤俊)

ビヘイビアグループ

私は中学の頃、数学や理科、技術が好きだったこともあり、ものづくりに興味をもったため高専に進学しました。私は高専と大学の中で工学の知識をつけていくうち、次第にロボットに興味を持つようになりました。大学院ではロボットに関わる研究がしたいと思い、研究室を探す中で見つけたのが、このロボティクス研究室でした。

現在、私はこの研究室で下の写真にある多脚のロボットを使って、様々な地形で歩行させる研究をしています。ロボットはこれから介護や探査など色々な場面で使用されるようになると思います。例に挙げた探査などでは特に、人が入り込むのが難しい場所でのロボットの使用が予想されるので、私の研究では、どんな環境でロボットを使用するのかわからなくてもロボットはしっかり進める、そういった技術の開発を目指しています。

ロボティクス研究室には現在3つのグループがあり、私はその中の、主にロボットの行動生成に関する研究を行っているビヘイビアグループに所属しています。ビヘイビアグループでは下の写真にあるようなロボットたちを使用して、ヒューマノイドロボットの歩行に関する研究や人とロボットがふれあう場での安全に関する研究、受付案内ロボットの研究など、ロボットの行動生成に関する様々な研究が行われています。他のグループにもそれぞれ異なる特色があるため、ロボティクス研究室全体では、ロボットに関する幅広い研究が行われています。そのため、ロボットやセンサなどの設備がかなり充実していると思うので、ロボットの研究がしたいという方にはおもしろい研究室なのでは、と思います。

「ロボットについて研究がしたいけどロボットに詳しくない」といった方でも、研究室に配属されてからプログラミングの入門やロボットのプログラミング実習など、先輩や先生方のサポートを受けながら研究に必要な知識・技術を学ぶ機会がしっかり用意されています。またそれ以外にも人材育成プログラム(IT3)のRTコースを受講することで、チームでのシステム開発や研究所見学など、更に特別な経験を積むことができるようになっています。

ところで、ロボティクス研究室では研究だけでなく、夏季の研究室旅行や研究室内のスポーツ大会などイベントも色々行われています。日々の研究の息抜きにこうしたイベントも楽しむことで、同期や先輩・後輩、先生方と充実した2年または5年間を過ごせるのではないでしょうか?

takyaku  hrp4  actroid

(左から,多脚ロボット,HRP-4,アクトロイド)

 ヒューマンモデリンググループ

ヒューマンモデリンググループのことについて質問形式でグループ内のM1とM2に回答を頂きました。

Question 1何を研究しているグループですか?

SU:  ロボットをバリバリ動かすのではなく人を測って研究しているのが特徴的です。ロボット系、情報系というよりは少し医学的な要素をはらんだ珍しい研究グループだと思います。担当の先生や先輩方とも研究について親身にディスカッションして頂けるので、楽しくよく理解しながら研究に取り組むことができます。

KO:  名前の通り、人の運動や感覚等を科学的に解明してモデリングする研究を主に行っています。まったくロボットをやらないわけではなく、研究に必要になれば、ロボットを動かすこともあり、他のグループに比較すると解析することが多いグループだと感じます。後、3Dプリンターを使用して自分で設計した治具を簡単に作製することができ、研究と同時にものづくりもできるグループだと思います。

Question 2ロボティクス研究室に入ったきっかけは?

OH:  ロボティクス研究は、HRP-4、NAO、HIROといった様々なヒューマノイドロボットを保有しており、ロボットに関する研究をするには最適な環境であるという印象を受けました。また、研究室内教育も充実しており、関連知識の補充やロボット実機演習などが行われていることから、本研究室では最先端のロボット研究ができることを確信し、配属先を決定しました。

SA: NAISTのいつでもオープンキャンパスに参加、入学後の研究室見学でいろいろな研究室を回り多くの先輩、先生方からお話をお聞きしたが、ロボティクス研究室が一番やりたい研究ができそうだったから。

Question 3: ロボティクス研究室に入ってから一番印象的な思い出は何ですか?

IS:  一番印象強かったのは毎日必ず誰かが研究をしているというところでした。 僕は高専専攻科出身かつ研究室の特色で卒論締め切り等ではないと後輩含め休日に研究室に行かなくても良かったため今まで休日は一人で研究していることがほとんどでした。 ですが、ロボティクス研究室では休日でもかならず誰か一人は研究室で研究しており、驚きを感じました。 今ではそれが当たり前に感じています。
KA:  医師との共同研究の成果を日本整形外科学会基礎学術集会で発表したことはとても印象に残っています。多くの医師の前での発表はとても緊張しましたが、貴重な経験をさせて頂きました。

Question 4: 現在取り組んでいる研究内容を紹介してください。

M2

KA:  私は人間の足部アーチ変形について研究しています。足部アーチとはわかりやすくいうと土踏まずのことで、体重による衝撃荷重の緩和など重要な役割を果たしています。足部アーチを調べるために、臨床の現場ではレントゲン画像を用いられていますが、レントゲン画像は静止画像のため、動作解析には適しません。そこで、私は光学式モーションキャプチャを用いた足部アーチ変形の3次元解析手法について現在、研究しています。

KO:  人が物を把持したり操作したりする際に指先において起きる滑りを計測する研究を行っています。人が得ている触覚情報を定量化する技術は、ロボットのセンシング技術だけでなく、スポーツ分野の把持動作解析等にも応用が可能で多様なアプリケーションが期待できます。現在は、指先腹部の皮膚変形と滑りの関係について解析を行っています。

M1:

IS:  やりたかったリハビリや福祉工学系の研究で現在、下肢の初期段階のリハビリを支援するシステムの開発を行う予定です。

OH:  筋電による手の動作認識

SA:  装飾義手を切断者の意思に従って動かすことができるようにするための義手の内部機構の設計開発を行っている。具体的には、指の受動的な屈曲動作のためにトーションバネを、能動的な伸展動作のためにワイヤ・アクチュエータを義手の内部に組み込むことを想定している。

SU:  指の柔軟性を利用した操りに関する研究をしています。解析的にアプローチをするのではなく、人を測ることでロボットハンドを動かす技術にしようとしているのが特徴です。ロボットハンドをよりよく動かし、人と同じような操りをすることができることを目指しています。

インタラクショングループ

・自身の研究について

僕はこの研究室で「人間の動作と環境構造を用いた3次元セマンティックマップの生成」に関する研究をしています。「人間の動作」と「3次元の環境」の2つの情報を組み合わせ、空間をカテゴライズすることで、そこが人間にとって何を行う場所なのかを認識することを目指しています。こうして得られた認識結果をロボットに与えてあげることで、将来はオフィスなどの人間が共存する環境における自律移動ロボットサービスへの応用が考えられます。

・ロボティクス研究室について

「気が利く人」は、相手が何をして欲しいのかを相手の振る舞いや置かれている状況から察して行動してくれます。ロボットもこんな風に気配りができるようになればおもしろい、それを自分で実現したいという思いがありました。「インタラクショングループ」では、センサーで計測したデータから意味のある情報を取り出し、人とロボットのインタラクションに役立てようという目的で研究しています。計測システムは研究の目的によって様々なものがあり、面白い例としては自動車に3次元の距離センサーを載せてNAIST構内を定期的に巡回して計測している学生もいます。

・研究以外で学べること

ロボティクス研究室の学生はそれぞれに割り当てられた係の仕事があります。僕は研究室内での飲み会やスポーツイベントの企画・運営をするイベント係をしていました。時には先生や学生からダメ出しを受け、気配りのできるロボットを作ろうと勇んで来たのに、本人が気配りできていないと痛感することもありました笑。もちろん大学院生なので研究第一ですが、今後社会で活躍していく上で周囲と協調しながら物事を企画・運営していく能力は必要なことなので、研究以外にも学ぶことがたくさんある環境だと実感しています。

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M1歓迎会の様子